景気の回復がなかなか進まない今、仮想化やクラウドを導入し、コスト削減を図ろうという企業も多い。それを実現するカギを握るのが、運用管理ツールである。クラウド時代に求められる運用管理ツールとはどのようなものか。アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト金谷敏尊と国内の運用管理ツール市場において大きなシェアをもつ「JP1」を提供している日立製作所 ソフトウェア事業部 JP1マーケティング部 部長の更田洋吾が語り合った。
仮想化は開発部門から徐々に導入が進んでいる
金谷
企業のIT環境は仮想化、さらにはクラウドを検討して行く方向に流れています。私たちの企業で行ったユーザー企業のデマンドサーベイでは、クリティカルなシステムに用いられていないサーバーやトランザクションが少ないファイルサーバーなどから仮想化に取り組んでいっているようです。クリティカルなアプリケーションについては、時期尚早だと考えている企業も多いですね。仮想化の導入は実際、どのように進んでいると見ていますか。
更田
今はまさに段階的に仮想化に移行していこうという企業が多いですね。調査によると景気低迷に伴い、今年度の国内IT投資は抑制傾向にありますが、サーバー仮想化市場は2013年度に向けて年平均20%以上の成長市場と予想されています。おっしゃるようにミッションクリティカルなシステムに仮想化を導入するという企業はまだまだ少ないですが、開発部門を中心に仮想化の導入が進んでいます。
株式会社 日立製作所
ソフトウェア事業部
システム管理ソフトウェア本部
JP1マーケティング部部長
更田洋吾 氏
金谷
米国をはじめとする海外の先進的な企業では、IT環境の中で仮想化に向くシステムは全て仮想化するという「バーチャル・ファースト・ポリシー」という方向に流れています。日本においてもこのような動きが見えてきていると思われますか。
更田
米国ではトップダウンで取り組む文化が根付いているので、日本より一歩リードしているのだと思います。しかし日本でも徐々に、そういった企業が出てきています。とはいえ、全面的な採用に踏み切れない企業が多いのも事実です。
金谷
それらの企業は仮想化のどのあたりに課題を感じているのでしょう。
更田
まずはサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などのITリソースを共有するリソースプールの運用に手間がかかることです。従来の運用ではリソースの検索・予約は手作業で、サーバー配備や実績確認はそれぞれ仮想化ソフトに付属したツールを併用して行わねばなりません。仮想化の規模が大きくなり管理するリソースプールが増えれば増えるほど、管理は大変になるのです。第二にシステム構成の変更による影響範囲を調べるのに多くの時間を取られてしまうということです。仮想化は進めれば進めるほど集約度が高まり、複雑性が増します。その状況でトラブルが発生したとき、どのサーバーで何が起こっているかを把握して即座に対処し、しかもその対処が障害の起こっていない業務やシステムに影響を与えずにできるのか、不安に感じているわけです。(
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