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システム運用管理者の地位を向上させるためには?

第3回


システムを利用する人々の多くは、システムがキチンと動くことを「当たり前」と考えており、そのことに関心を払う人はほとんどいません。そして、人間は興味が湧かないモノに対する価値を低く捉える傾向があります。システムの運用管理の地位向上の鍵はこのあたりにありそうです。

 

 

 とある日。経営会議でシステムに関するコストの内訳を見た営業部門の取締役が情報システム部長を問いただしました。「システム運用管理部門は、サービスレベル低い割にはずいぶん金使っているじゃないか。なんでそんなにコスト掛かってるんだ?」「そもそも運用管理って、何やってるんだ? 大したことやってないだろう?」と、まくしたてます。情報システム部長も「同程度の規模の会社と比べても運用コストは高くないと思いますし、品質も決して低くないはずです」と反論しては見たものの、取締役は「そんなはずはない!何とかしろよ」と一蹴。その場を立ち去ってしまいました。

 さすがに最近ではこのような事態はあまりないと思いますが、システム運用管理部門がどのような活動を行っているのか。その結果どうなっているのか。理解してもらうのが難しいものです。今回の記事ではいくつかの質問への回答を通じて、「ISO20000の取得による運用管理の地位向上」に向けたヒント(マニュアル)をご紹介いたします。

 

 

運用管理の成果をどのように伝えるか

相談者

システム運用管理部門に対する評価が成果の割に低いと感じます。どうやったら正当な評価を受けられるでしょうか?

運用先生

システム運用管理はよく「水」や「空気」に例えられます。「蛇口をひねると水が出て当たり前」「空気はあって当たり前」。例えば蛇口を捻って水が出たときに「水が出てきたことに感謝」したり、水道水を飲むときに「水を浄化することに莫大なコストが掛かっているのだろう」と考えたりする方はほとんどいないでしょう。

重要なものほど意外と見落とされてしまいがち?
重要なものほど意外と見落とされてしまいがち?
 

ITもまったく同じです。ユーザはシステムが「動いて当たり前」と思い、「システムを動かし続けるために、何に幾らの費用が発生しているか」は意識していないと思います。たとえ意識したとしても、システムを動かし続けるためにシステムやシステム運用管理に携わる人たちがどのような仕組みを持ち、どのような活動を行っているかを把握していることは極めて稀です。

 

人間は「よく分からないモノ」には興味を持ちません。そして、興味が湧かないモノに対しては、価値を低く設定してしまいがちです。システム運用管理部門に対する評価を変えるための有効な解決策、それは身も蓋もありませんが「システム運用管理の『価値』を伝える」ことです。そのためにISO20000認証の取得はとても効果的なのです。

 

ISO20000とは?

ISO20000とは、ITサービスの品質向上のためのガイドラインであるITILRをもとに作成し、ITサービスマネジメントに関する要求事項を規定した国際規格です。

 

例えば、自動車免許を持っていれば、「あ、この人は自動車が運転できる人なんだ」とすぐに分かります。免許を持っていなければ、たとえ自動車の運転が上手だとしてもそれを理解、信用してもらうために多大な労力が必要です(そもそも、自動車免許がないと公道での自動車の運転はできません)。

可視化は目に見えないスキルやノウハウをアピールする有効な手段
可視化は目に見えないスキルやノウハウをアピールする有効な手段
 

自動車免許の例と同様に、ISO20000の認証を取得すれば、システム運用管理で実施すべき項目をヌケモレなく、かつ継続的に改善しながら実施していることの証明が簡単にできます。特に日本では、情報セキュリティマネジメントシステムのISO27001の取得組織数が世界の取得組織数の50%以上(出典:http://www.iso27001certificates.com)を占めるほど、ISOに対する評価が高い国です。自動車免許と違い「取得していないと運転(運用管理)が出来ない」とはなりませんが、取得していることで大きなアピール(=『価値』を伝える)になることは間違いありません。

 (次ページへ続く)

 

 

次のページ
ISOの取得には意味があるのでしょうか?

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この記事の著者

應和 周一(オウワ シュウイチ)

株式会社野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任コンサルタント。ITILRをベースとした技術支援サービスの企画立案やITILR準拠のプロセス/ツールの設計/導入支援に従事し、現在は、ITサービスマネジメントのコンサルティングを担当。EXIN ITILマネージャ試験採点官。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/2621 2010/11/24 11:29

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