次なる仮想化ポイントである「ストレージ仮想化」を多岐にわたって解説してきた本連載も今回が最終回になる。最終回では、SANmelodyとVMwareをいち早く導入しインフラ全体の仮想化を行なった先進ユーザとの対談を行い、商用サービスに仮想化技術を採用した理由や、実際の導入効果、ノウハウ、今後の課題など現在のリアルな仮想化事情をご紹介していく。
最終回は、Total Enterprise Virtualization(以下TEV)を国内でいち早く商用インフラに採用した先行ユーザーである株式会社ITコアの事例を対談形式で紹介する。ITコアは、「GrowServer」という仮想化技術を利用したハウジング&ホスティングサービスを長年運用している。また昨年より、その運用ノウハウをパッケージ化した「トータル仮想化ブレードシステムTEV2008」のソリューション販売もスタートさせた。SANmelodyをはじめとする仮想化技術の採用理由や、実際の導入効果、課題やノウハウなどを、ITコアの代表取締役社長である山田 敏博氏に語ってもらった。
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山田 敏博氏(Toshihiro Yamada)
株式会社ITコア代表取締役社長
富士通の汎用機SEからリクルートを経て起業。先進的な技術をいち早く取り入れたビジネスを得意とする。 |
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片山 崇(Takashi Katayama)
データコア・ソフトウェア株式会社セールス/マーケティングマネージャー
SIerでのストレージソリューションビジネスを立ち上げ後、データコア・ソフトウェアに入社。現在は国内のセールス及びおよびマーケティングを統括。 |
仮想化を選択した理由
片山
まずは、当初GrowServerを仮想のインフラでスタートしようと思った理由やコンセプトからお聞かせください。
山田
われわれは創業当時から専用サーバホスティングを行なっておりました。1Uのサーバや安いサーバが出てきて競合が増し、さらに価格も安くなり、差別化が厳しくなりました。1つ目の理由は、そういった中でホスティング事業者としての競争優位性を出すためでした。安いサーバの商売をしても面白くないので、「付加価値の高いものを」と探したところ、VMwareが良さそうだなというのが、きっかけですね。
片山
一般ユーザーの仮想化へのイメージで真っ先に出てくるのは、ハードウェアの統合によるコスト削減だったりします。しかし、御社のGrowServerのプランでは、より低価格なサービスの手段として仮想化を採用するのではなく、仮想化することでより付加価値の高いサービスを提供し、優位性や差別化を図ったということでしょうか?
山田
はい、そうですね。統合化・コストダウンというのはあくまで仮想化の効果の1つです。GrowServerではむしろ、付加価値の高いサービスのために仮想化を選択しました。また、もう1つの期待は納品ネックの解消でした。当時、専用サーバのホスティングが売れると、サーバの発注から設定まで時間も手間もかかっていました。それだと人員がすぐイッパイになってしまいます。結局、売り上げや営業も人員がイッパイになると共にストップしてしまいます。「売れれば売れるほど儲かる」「スピーディーに納品できる」というメリットも仮想サーバに期待していました。最初のお客様の要件聞きから構成設定、カスタマイズの要・不要の確認などは変わらずに人手がかかりますが、キッティングや構築の手間は省けるようになりました。
片山
なるほど。通常インフラというとハードウェアのビジネスなので、当然納期や物理的な作業工数がありますが、仮想化を行うことで納品や作業の効率を上げられるということにも着目されたわけですね。GrowServerの運用を開始されてから長い期間が経ちましたが、現在VMの数やサービスの規模はどのような状況でしょうか?
山田
現在は、ゲストOSで300台強・ホストOSで20台位です。当初はゲストOS1000台まで3年位で持っていこうと販売を開始しましたが、パフォーマンス管理や集約化によるリスクの問題が突出しました。何度か大きな障害が起き、あまり急激に拡張を行うのはリスクが高いということが分かりました。今はGrowServerだけで台数や売り上げを伸ばすというよりは、トータル仮想化ブレードシステム「TEV2008」というパッケージ商品を発売したように、リスクヘッジを行いながら安定した状態で慎重にのばしていこうとしています。
片山
そういった中で、GrowServerのインフラに私どものSANmelodyを導入頂いたポイントはどこにあったのでしょうか?