グローバルIT戦略を推進する資生堂のONE MODELプロジェクト
資生堂は現在、日本起源のアジアを代表するグローバルプレーヤーを目指して、業務改革を行っている。2010年3月期に37%だった海外売上を、2017年度には50%にまで持ってく方針だ。そこで改革のドライバーとなるのがITであり、グローバルIT戦略を推進するためプロジェクトONE MODELが立ち上げられた。構築するのは、経営指標の「見える化」や業務の「標準化」を可能にする、統一システムだ。
資生堂のIT戦略を実現するためのポイントとして提箸氏が挙げたのは以下の7つ。5年程度のスパンで見たシステム基盤提供の優先順位づけ。グローバルなITマネジメントの実現。投資水準と資源配分の考え方の見直し。投資効果を管理するスキームの実現。グローバルソーシング戦略。エンタープライズアーキテクチャー方法論を用いた標準化。グローバルで活躍できる人材の確保と育成。
その中でグローバルなITマネジメントの実現面では、まず統本社内のグローバルIT管理機能と国内IT管理機能を分離し、グローバル管理の役割を明確化した。将来的には地域ごとのITセンターを作る。提箸氏は「形から入ると組織の無用な肥大化を招く恐れがある。そこでまず我々が機能をどう作るかに専念している」とポイントを語る。
投資水準と資源配分の考え方の見直しでは、情報化投資・費用を売上の一定比率無いに抑制することを約束し、3~4年スパンの投資ガイドラインを各事業部、関係会社に提示した。投資管理スキーム実現では、定性・定量の二面による評価にした。定量評価は出しやすいが、大きなプロジェクトになると定性面が大きなファクターになる。経済産業省による投資評価のガイドラインの作り方を参考にした。グローバル人材の確保は難題で、事業部の人員を情報部門に入れ、現場を知っている人を長期的な計画で育成している。
グローバル標準を定め、国ごとにローカル要件を取り込む
資生堂のグローバル ONE MODELプロジェクトの第1フェーズでは、国内の新基幹システムが2007~2008年にSAPで構築され、BIによる分析系も導入されている。現在、標準モデルを海外に展開する第2フェーズに入っている。
ONE MODELでは各社共通の業務プロセスを規定し、パイロット導入により検証した上で、各社に展開している。国ごとの法令対応や最低限の各社要件を、ローカル要件として取り込む。システムを維持管理する組織、機能も作り上げた。維持管理の機能としては業務プロセス、データ標準、アプリケーション保守からヘルプデスクまで、6つの大きな機能を管理すると宣言している。
プロジェクト開始前、資生堂には435のマーケティングの仕組みがあったが、BIの仕組みを使うことにより143に縮減している。「一番変わったのは、以前はユーザー層で分かれていたシステムを、すべてのユーザーが同じ仕組みを見て使うという考え方に統一したこと」(提箸氏)。
最後に提箸氏は「グローバル最適の実現は、ITだけでは達成できない。ITと業務プロセス、経営が一緒になってレベルを上げていくことが必須になる。これは終わりのない戦いだと考えている」と述べ、基調講演を締めくくった。