その発電体制、本当に動きますか?~自家発電装置など計画停電に備える行動指針
東日本大震災によって電力事情にも影響が出ている。東京電力は地震発生の3日後の3月14日から、電力供給不足による大規模停電の回避を目的として、管内各エリアで最大7回の計画停電を実施。4月8日には原則不実施を発表したものの、再び受給逼迫が予想される夏に向けて大口顧客への使用量削減を要請している。セミナー実施時点では、削減目標が25%から15%へと軽減されているが、状況は依然として楽観視できない。何らかの備えが必要であることは確かだろう。リサーチディレクターの石橋正彦氏は予断を排除した電力体制の見直しを勧める。
「(災害対策などを目的として)地方都市のデータセンターを利用している企業は少なくないはず。計画停電は、東京23区よりも首都圏を取り巻く地方都市などで実施されている。夏場にどのような事態が起こるかはっきりとはしないが、計画停電の実施状況などを考えてあらゆる想定をすべき」(石橋氏)。
自家発電装置のチェックは、電力状況への対策として早期にやっておきたい。設置されてさえいれば安心と考えがちな発電機だが、実際にはどれぐらいの働きをしてくれるものなのだろうか。緊急時に備えて、確認しておきたいポイントはいくつもある。
まずは、設置場所を確認する。自家発電装置は高温の排気ガスと騒音を排出するため、周囲の環境によっては実際の運用が難しい場合がある。例えば、住宅街に装置を設置したものの、騒音と熱で苦情が殺到し、やむなく運転を停止した企業の例もある。ビルの屋上に配置されている場合は、燃料の供給体制を考慮する必要があるし、地下の場合は熱とガスの排気がポイントになる。まずは、自社の発電装置が実際に稼働できる状態にあるか把握しておくことが必要だ。
次に、発電装置を動かすために必要な燃料の供給体制も確認しておこう。石橋氏が取材した自家発電装置の場合、1分間に60リットル、1時間で1,000リットルもの燃料を消費するという。「大規模な災害が起こっても燃料が必ず供給されるか、今一度、確認が必要だ」(石橋氏)。
さらに、自家発電装置によって生み出された電力がどの装置に供給されるかも確認しておきたい。「例えば、データセンターの場合、自家発電装置による電力供給時には、空調や照明を制限するよう設定しているケースもある」(石橋氏)。空調が停止し、照明が不十分な環境では平時とは比べものにならないほど作業が困難になる可能性がある。当然、緊急時の対応手順に考慮を加える必要があるだろう。
一方、自家発電装置が備わっていない場合でも、早急な導入は避けた方が良さそうだ。むしろ石橋氏は、事前チェックをした上で「電力供給に関するセカンダリーサイクル、もう1つ別の体制を確保することを検討すべき」と話す。
もちろん、停電対策は発電機だけに留まるものではない。例えば、非常時にシステムをシャットダウンする際の手順を再確認しておくことも必要だ。「万が一のオペレーションミスも想定し、定められた手順に沿った訓練も重ねるべき」(石橋氏)。