「ここ、最近、ほぼ毎週のようにハッカーによる情報漏洩が生じている。情報セキュリティを取り巻く環境が大きく変わってきている」。発表会の壇上に立った株式会社シマンテック 代表取締役社長の河村浩明氏は、情報セキュリティの環境は3つの観点で様相を変えつつあると述べる。
1点目は脅威の爆発的な増加。シマンテックが2010年の1年間で対応した脅威の数を平均すると1秒間に9件という膨大な数に上る。まさに「爆増」という言葉がぴたりと当てはまる状況だ。2点目は脅威の悪質化。脅威による被害が甚大化するに従って、企業の担当者の心労も大きくなっている。ある都銀幹部は、ゼロデイアタックの脅威を考えると夜も眠れないと河村氏に漏らしたという。3点目は脅威の発生源の拡散。グローバル市場に進出し、グローバル企業と取引する過程では脅威との遭遇機会もどうしても多くなる。今後、企業にとって自社のセキュリティの担保は非常に重要な観点となるだろう。
このような背景の下、シマンテックが満を持して今年末にリリースするのが「Symantec Endpoint Protection 12」だ。2011年2月のリリース計画発表以後、3月のアルファの提供とユーザー、パートナーとの共同検証開始、5月の公開ベータの提供開始を経て、フィードバックも蓄積されつつあるという。「今回の主要なテーマである『防御力と軽快性の両立』は技術陣にとって大変なチャレンジとなった。堅牢性はもちろんのこと、近年は仮想化技術の浸透などによりパフォーマンスがますます重要になっている。最新版は、弊社の技術者が3年間にわたって心血を注いだ末に誕生したものだ」(河村氏)。
シマンテックが新製品で新たに開拓を狙う市場は、従業員数が1,000人以下の中堅中小企業が形成するSMB(Small and Medium Business)領域だ。「3月の震災を通して、グローバル規模のサプライチェーンに日本のSMBがガッチリと組み込まれていることが明らかになった。今後は、大企業だけでなくSMBもBCPを実践していくことが重要になる。それができなければ、世界のサプライチェーンから取り残されることになる」と河村氏は言う。
ただし、同市場のユーザー側の意識は必ずしも高いとは言えないようだ。2010年4月に発表された第三者機関の調査「エンドポイントセキュリティユーザー調査」によれば、1,000人以下のSMB層がセキュリティ製品を選択する際に重要視するのは価格と運用コスト。1ヶ月にウィルス検知が1件もなかったと回答する企業が43%にも上っているという。「これまでSMBのお客様はほとんどセキュリティを意識しておらず、不便を感じていないということだろう。しかし、セキュリティの事情は変わってきており、SMBにおけるBCPの策定も重要になってきている。今後、パートナーと協力して啓蒙活動を進めていきたい」(河村氏)。
パートナーのサポートも強化していく予定だ。シマンテックが実施したパートナーを対象としたアンケートによれば、テクニカルサポートの品質や営業支援という観点では評価を受けているものの、エンドユーザー導入時の技術支援、テクニカルサポートの利用しやすさという点で不満を持っていることが判明した。すでにナレッジを蓄積するためのデータベースの改善をグローバル規模で進めているところだ。今後は、エンドポイントセキュリティ「Symantec Endpoint Protection」、システム環境のバックアップソフトウェア「Symantec System Recovery」、SaaS型企業向けセキュリティサービス「Symantec.cloud」の3製品を中核として、既存のパートナー網を利用して展開していく予定だ。
「シマンテックのビジネスは順調に成長している。特に2010年後半は大企業を中心に導入が進み、対前年比37%と大幅な成長を達成した。今年度は、SMBでの売り上げを伸ばすことを最大の目標としている。世界のキープレイヤーである日本のSMBに自信と安心を届けていきたい」と河村氏は締めくくった。