メインフレーム=レガシーではない
「メインフレームは高いからダメというものではない。メインフレームにはコンピュータとしての冗長性を含めたすべての要素が入っているからこそ高い。その金額には理由があり、今でも導入されている。メインフレームがイコールレガシー(ITの旧資産)という考え方は間違い」
こう語るのは、アクシスソフト株式会社 代表取締役社長 永井一美氏(2011年9月末同社を退任)である。
それでは、コンピュータにとってレガシーとは一体何か。永井氏は、日本のコンピュータ産業の半世紀あまりの歴史を解説するところから始めた。
1950年代に通産省が音頭を取り、IBM650の性能を上回る目的で、富士通、日立、北辰電機、黒澤通信機、三菱電機、日本電気、沖電気、東芝で分担開発が始まる。50年代の後半でアメリカとの技術の差は10年であると言われた。60年代に政府による国産コンピュータメーカの保護が強化され、輸入制限や関税がかけられるが、70年代に批判が高まり緩和される。80年代のホスト中心の時代から、90年代クライアント/サーバの時代が到来し、2000年代はWeb/インターネットの時代となる。
こうした時代の流れを俯瞰して言えることは、日本のコンピュータ市場はメインフレームやホストの時代から連綿と続く「保守の文化」があることである。
こうした「保守の文化」は、ともすればベンダーロックインという批判を浴びるが、言い換えれば長期の契約であり、技術の信頼にあるという。
その上で、「かつてのホスト中心のシステムは、むしろこれからのクラウドの時代にあっているが、クライアント/サーバは将来的には滅びる」と指摘する。
クラウド時代において業務システムはどう連携すべきか
クラウドに向かうこれからの時代に、企業が培ってきた業務システムはどう変わるのか。
永井氏は、「企業は社会の公器」「日に新た」という松下幸之助の言葉を引き、経営を刷新していくためにもITの変化の必要性を語る。
具体的には、今後の業務アプリケーションは、マルチデバイス対応とWeb化が必須なのだと言う。
「企業のシステムは、様々な端末から使われていく。そしてWeb化は必須である。52年間の間にコンピュータは変化し続けた。今安定して動いているから良いという考えは捨てるべきだ」
「経営改革をするためにシステムを利用するという考え方がある。新しいシステムを採用し、作業員にルール化する。システムも日に新たでなければならない」(同氏)
たしかにWeb化は必須であるが、課題がある。Webはもともと閲覧のシステムであるためページ遷移である。これに対して業務システムは「データの入力」が基本だからである。そこで重要なのはUIや操作性といった非機能要件である。