日本オラクルは10月12日、Oracle Linuxのカーネルである「Unbreakable Enterprise Linux」および仮想化環境「Oracle VM 3.0」の国内提供を開始した。日本オラクル 代表執行役社長 最高経営責任者 遠藤隆雄氏は「Linuxがエンタープライズ分野で普及するにはミッションクリティカルな環境で安全/確実に動作するという保証が必要。ユーザが安心して使えるLinux環境をオラクルが提供する」と語り、エンタープライズ分野においてベストのLinux環境を届けるとしている。
両製品の概要については、米Oracleでチーフ・コーポレート・アーキテクトを務めるエドワード・スクリーベン氏が解説を行った。同氏はOracleにおけるOSS事業全般を統括している。
Oracle Linux / Unbreakable Enterprise Kernel
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンOSであるOracle Linuxは、RHEL互換カーネルと2010年に初版がリリースされたUnbreakable Enterprise Kernelの2つのカーネルを用意している。
この2つは完全に互換性を保っているが、「ベンチマーク結果によれば、RHEL互換カーネルよりもUnbreakable Enterprise Kernelのほうが75%も高速」だとスクリーベン氏は強調する。
Unbreakabale Enterprise Kernelは現時点でRelease 2となっており、そこで実現した以下の新機能がOracle Linuxに提供されることになる。
- パフォーマンスの改善 … アプリケーション向けスケジューラの改良、CPU間をまたいたパケット制御、メモリ中心の処理向けの透過的なヒュージページ
- Linuxコンテナ … 低オーバーヘッドのOS分離と粒度の細かいリソース管理
- 仮想スイッチ … QoS管理、フィルタリング、VLANへの分離
- DTrace … 包括的な動的トレーシング
ここで最も注目したいのがDTraceだ。DTraceは旧Sun MicrosystemsがSolaris用に開発した動的トレーシング機能で、稼働中のカーネルやアプリケーションの情報を取得し、リアルタイムでのトラブルシューティングを可能にする。Solarisのほか、FreeBSDやMac OS XなどBSDベースのOSにも実装されているが、LinuxへのポーティングはOracle Linuxが初の事例となる。
ただし、DTrace開発者のAdam Leventhal氏はこのOracle LinuxにおけるDTraceについて「現時点ではDTraceと呼べる段階にない」と苦言を呈しており、今後の改善を要求している。
また、Oracle Linuxの新機能として、今年7月に買収したKspliceの"ゼロ・ダウンタイム・パッチ"技術を搭載している。これは数時間以上かかることが多かったLinuxシステムへのパッチ適用を実質ゼロにする技術で、稼働中のシステムの再起動や中断を行うことなく、Kspliceクライアント経由でリアルタイムにパッチを適用することが可能になる。この機能はOracle Linux Premier Supportの一部として提供される。