「黒船」Kindleの登場
米アマゾンが4月に同社の電子書籍リーダー「Kindle」を日本国内で発売する。あくまでも予定ではあるが、日経新聞が報道したため、国内では再び電子書籍に注目が集まりそうだ。
アマゾンが販売するKindleには、大きく二種類に分類できる。電子書籍を読むためのKindleシリーズ。電子書籍に加えて映画や音楽も楽しめるKindle Fireの二系統が存在する。それらを細かく分けると五機種のランイナップがあり、報道によると今回国内で発売が予定されているのは、電子書籍の系等の一機種でありタッチ入力が可能な「Kindle Touch 3G」だ(図1)。
同機種は、3G利用によりどこでもインターネットに接続することが可能だが、通信費はアマゾンが負担するためユーザーは通信料を支払う必要はない。
米国では「一般的」になりつつある電子書籍リーダー
米国のPew Research Centerが実施した、16歳以上の米国人を対象とした電話アンケートによると、2011年末のクリスマス商戦で電子書籍専用端末の保有率が10%から19%に上昇したという。五人に一人が保有していることになる。また、マーケティングの世界では普及率が16%を超えると、新技術は一部のマニアの領域を超え急激な拡大期に入るとされている。
さらに、同調査ではタブレット端末保有率も同じく10%から19%になったとある。電子書籍専用端末とタブレット端末どちらかで電子書籍を読めるということを考慮すると、16歳以上の米国人の29%が電子書籍コンテンツをいつでも読める環境になっている。
国内の電子書籍普及の起爆剤になるかは懐疑的
国内では、2010年にiPadや、シャープ製「GALAPAGOS」、ソニー「Reader」といった電子書籍リーダーが相次いで発売され「電子書籍元年」ともてはやされた。しかし、iPadは、好調であるものの電子書籍リーダーとしての利用が主な用途ではない。ソニー「Reader」は米国では健闘しているが、国内では「売れている」とは言いがたい状況にある。GALAPAGOSに至っては発売からわずか10ヶ月で自社販売終了となり、国内ではお世辞にも「電子書籍市場」が活況だとは言えない状況だ。
米国の電子書籍市場で圧倒的なシェアを誇り、電子書籍市場を築きあげたと言っても過言ではないKindleの上陸ではあるが、国内の電子書籍市場の状況を一変させる程の力はないだろう。
今回は、Kindle普及のためのシナリオと、Kindleビジネスを軸としたアマゾンの戦略について考察してみたい。