昨年、6回連載でお送りした「アジャイルUXの潮流」では最新のUXのトレンドをご紹介しました。1年が経ちました。"ドッグイヤー"と言われるIT業界においては、当然のように新たな潮流が生まれています。そして、その潮流はIT業界にパラダイムシフトを引き起こすような大きなものとなりそうです。
リーンスタートアップとは
多くのIT系スタートアップが起業から数年も経ず姿を消します。私たちはそれを「ベンチャー企業に失敗はつきものだから」と当然視しがちですが、実はその失敗の多くは製品が開発できなかったからではありません。製品を「誰も欲しがらなかった」からなのです。つまり多くの企業は「失敗を達成した(作るべきでない製品を作った)」のです。
このように「間違った製品を構築し、そしてそれに長い時間をかけ、構築に無駄なお金をかけるだけでなく、その間違った製品を売ろうとセールスやマーケティングに多額のお金をかける(*)」くらい無駄なことはありません。もはやビジネスプラン1枚で何億円もの資金を集めることは不可能ですし、そもそもそんな無謀な賭けをすべきではありません。(*)http://www.infoq.com/jp/news/2011/12/lean-startup
そこで現代の起業家は新たな方法を模索し始めています――それが『リーンスタートアップ』です。リーン(Lean)とは"贅肉"がなく効率的という意味で、トヨタ生産方式を研究して生まれた「リーン生産方式」に由来しています。
リーンスタートアップでは、まず仮説検証のための必要最小限の製品=MVP(Minimum Viable Product)を作って、そのMVPを使ってユーザからのフィードバックを得て、そのデータに基づいて製品の改善を繰り返し行います。そして、どんなに製品をチューニングしても評価指標が目標に達しないと判断した時は戦略転換=ピボットを決断します。
このような仮説立案と検証のためのフィードバックループ=Build-Measure-Learnを常に高速回転させているので、スタートアップという非常に不確かな状況の中でも、失敗を最小限に抑えることができるのです。
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樽本 徹也(タルモト テツヤ)
利用品質ラボ代表。日本では数少ないユーザビリティ工学の専門家で、ユーザ調査とユーザビリティ評価の実務に精通している。現在はプロのコンサルタントとして、ウェブサイトから携帯電話まで幅広い製品のUI/UX開発プロジェクトに携わっている。 著書は『アジャイル・ユーザビリティ』、『ユーザビリティエンジニアリング』、『これだけは知っておきたい組込みシステムの設計手法』の3冊がある。公式サイト「人机交互論( http://www.usablog.jp/ )」で最新情報発信中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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