小さく始めて大きく拡大
「当初は、大企業などの部門導入がメインだと予測していました。実際には、中小規模の会社の部門でまず採用され、そこからさらにその企業全体へと発展する例が数多くあります」
と語るのは、サイボウズ株式会社ビジネスマーケティング本部 kintoneプロダクトマネージャーの田村悠揮氏。最低ユーザー数である5ユーザーでの契約が多いという。まずは小さく始めてkintoneを評価し、これは使えると判断できればそこからユーザー数を追加する。まさにクラウドのサービスならではのアプローチと言えるだろう。
すでに導入された企業においてもkintoneの評価は上々だ。顧客事例も確実に増えているという。kintoneを導入している中小企業の中には、専任のIT担当者がいない場合も多い。事例をひとつ、紹介しよう。
株式会社ワーク・ライフバランスは2006年に設立、企業や組織がワークライフバランスを実現するためのコンサルティングやセミナーなどを実施している会社だ。同社ではさまざまな仕事を担当者が変わってもカバーできるよう、あえて専任のIT担当者などを置いていない。そのため、誰もが扱える容易な仕組みが必要であり、選択したのがkintoneだった。
「ワーク・ライフバランスでは受講生向けにクローズドなWebサイトを作りたいという要望がありました。セキュリティを確保したサイトとなるので、従来なら外注して作ってもらうところが、kintoneを使ったら自分たちで作れてしまったそうです。ファイルの共有機能なども簡単に実装でき、さらにコメント機能を使ってフィードバックが容易に実現できたことで、セミナー受講者との距離も縮まったという評価をもらっています」(田村氏)
ワーク・ライフバランスの他にも、kintoneのコメント機能を活用している例は増えてきている。コメント機能の高評価は「いい意味で想定外」と田村氏。たんに、チャット機能を搭載しているのではなく、コメントがデータベースに格納されているデータとひも付いているので、目的の情報を見に行った際にそれに関連するコメントすべてを見ることができる点が便利なのだそう。データを溜めることが主だったデータベースに、コメント機能でコミュニケーションという新たな価値が生まれ、それがいま高く評価されているのだろう。
もう1つ、株式会社川島不動産の事例も興味深い。同社ではこれまで、Microsoft Accessで構築した日報管理システムを運用していた。これと同様の仕組みを、担当者がほんの1時間足らずでkintone上に構築できたというから驚きだ。同社では、この日報管理システムを動かすためだけに、Windows XPのマシンを移行できずに1台だけ残していた。なので、終業時間になると日報の入力待ちが発生していたのだ。その日報管理システムを自分たちで簡単にkintoneに移行でき、当然クラウド上の仕組みなので、どのPCからも同時利用できる環境ができあがった。
日報管理システムが簡単に移行できたので、川島不動産では顧客管理の仕組みもkintoneに移行した。従来はGoogleフォームを用いGoogleスプレッドシートにデータを蓄積していたが、あとから編集ができなかったり検索性が良くなかったりと使い勝手の面で課題もあった。それをkintoneに移行することにし、ほぼGoogleフォームと同じような画面がすぐに構築できたという。
川島不動産では、kintone化で使い勝手が向上しただけでなく、新たにkintoneのレポート機能を活用するようにもなった。集計レポートなどは従来の仕組みでも出力できたが、紙のレポートではそれを見てそこで終わってしまう。kintoneのレポート機能ならば、スタッフみんなでデータを見ながら情報共有ができ、何か疑問がでればすぐにその場で切り口を変更したレポート集計を出すことが可能。企業の中で、スタッフみんなで情報を分析する動きへと発展していったのだ。分析というと敷居が高そうにも思えるが、kintoneなら条件を変えてグラフ化するのも簡単だ。