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「ソーシャルメディア☓事前期待のマネジメント」でビジネスは拡大する-- 『勝負は、お客様が買う前に決める』著者 柴崎辰彦氏

オオクワガタのブリーディングとサービスサイエンス

 --- 柴崎さんの富士通のお仕事とサービスサイエンスの関係は?

 

  サービスサイエンスは、もともと米国のIBMから始まっています。日本では、情報処理学会でも議論されていますし、東工大、東大、京都大学、一橋大学などで研究されています。情報分野の理工系やマーケティング、経営などの人文系など様々です。私の場合は大学で学んだということでなく、「現場実践系」といえるでしょうね。

 富士通でCRMのビジネスやコールセンターのビジネスを立ち上げる中で、いろいろな方と意見交換をしていました。諏訪良武氏との交流からサービスサイエンスを知って、諏訪氏の『顧客はサービスを買っている』を読んだ時、自分の求めていたものはこれだと感じました。実際、諏訪さんの考え方は、オムロンフィールドエンジニアリングでお客様のサポートでやってきたことをベースにしているので、現場のビジネスに適合するのです。

 サービスを科学するだけでなく、実際のビジネスに活かすということが目的なんですね。

 

富士通株式会社 システムインテグレーション部門 戦略室長
柴崎辰彦氏
富士通株式会社 システムインテグレーション部門 戦略室長 柴崎辰彦氏

 

 --- 柴崎さんは、オオクワガタのブリードサービスのWebを運営されていますね。こちらでの実践が活かされているということですね。

 個人としても、オオクワガタを対象としたCRMサイトを運営してきました。そこでWebやモバイル、オークションサイト、ソーシャルメディアなどを使い、マルチチャンネルのコンタクトセンターを実践してきました。

 オオクワガタのブリードをサービスとして考え、価格を下げずに価値を高め、売っていくという実践の中で、サービスサイエンスの考え方がぴったり当てはまった。そこで「サービスサイエンスとオオクワガタのブリーダー」に関するプレゼンをあるセミナーでしたところ、情報処理学会の先生の目に止まり論文や学会のセミナーで発表の機会をいただきました。

 

 --- 具体的にはサービスサイエンスのどういうところが、実際のビジネスに役立つのでしょうか?

 

 成功の鍵は、まずお客様の事前期待を理解し、その事前期待に応えることです。

 お客様がサービスや商品を体験した時の満足度は、事前の期待値と実績評価の関係によって決まります。実績がお客様の事前の期待値にどこまで応えているかを把握することが大事。ソーシャルメディアでの双方向の対話は、お客様との共感を形成していくプロセスなのです。マスメディアのように一方通行で使うのではなく、お客様の事前期待というものを意識してやっていましたか?と問いたい。

 本当の商売上手の人というのは、これは意識しないでやっていることですが、普通の人でも、事前期待の分類や把握の仕方を身につければできます。

 そのために、そもそも事前期待というものはどういうものがあるかを把握する必要がある。日本人の習性として、「とにかくお客様のため」と思いがちなのですが、次のような、事前期待の分類をすることである程度頭の中がすっきりします。

 

 これは個別の話だねとか、これは共通的な話だねとか、これは潜在的なものだねとか、時と場合によって変わるものとか、事前期待にもいくつか種類があって、それに応じた処方箋、対応をリアルな応対やソーシャルメディアでおこなうというのがポイントです。基本は共通的な事前期待に応えること。ビジネス街の定食屋さんでは、スピードが共通的な事前期待で、定食が早く出て来なかったら嫌われます。常連であれば阿吽の呼吸で、店員がメニューを理解してくれるというのは、個別的な事前期待です。状況で変化する事前期待は、お客様との会話などから読み取ることができます。潜在的な事前期待では、お客様が気づかないサプライズの提案など。野球ショップにグッズを買いにいった少年が、イチロー選手が好きであれば、予期していなかったプレゼントがもらえて、強烈なロイヤリティが生まれるとか。事前期待の段階や種類を理解して、事前期待に応えることが第一歩です。

 それができるようになって、事前期待が実態を上回るようになったら、次に「事前期待のマネジメント」が必要になります。事前期待に応えることが第一ステップ、次のステップが事前期待をマネジメントすることです。

次のページ
事前期待をどうマネジメントするのか

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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