ミッション成功の瞬間は「キュリオシティが自撮りの写真を火星から送ってきた!」
「クラウドは我々にとって水のようなもの。そこにあることが当たり前で、なんの躊躇もなく使うことができる。昨日まではSFの世界でしか起こり得なかったことが、今日はそれが現実になり、明日起こる何かのヒントとなる」- いかにもNASAらしいコメントでジャパンセッションを開始したソダーストーム氏。昨日までのSFを今日の現実に変えた立役者はITの進化の象徴であるクラウドだと強調します。
もともとNASAは自前でのクラウドプラット基盤開発にも熱心に取り組んできた経緯があり、2008年には「Nebula」というプロジェクトをスタートさせています。現在はOpenStackに名前を変えているNebulaプロジェクトですが、NASAは2012年5月、OpenStackの開発から手を引き、「今後は商用クラウドのスマートなコンシューマをめざす」と宣言、以降、AWSの大口ユーザとしてその名前を見る機会が増えています。「自前での調達からクラウドによるプロビジョニングへ、これがNASAの方針」とNASA/JPLのCIOであるジム・リナルディ氏も明言していますが、連邦政府のいち組織であるNASAがはっきりとITの所有から利用へと舵を切ったことでも話題になりました。
そしてNASAとAWSのコラボレーションがみごとに結実した瞬間が、8月5日のキュリオシティ火星着陸でした。8カ月におよぶ地球からの航行を経て、いままさに火星に到着しようとしているキュリオシティ、その記念すべきランディングの瞬間を世界中の数百万ユーザに向けてライブストリーミング配信するべく、NASAはAWSのテクノロジを使ってプラットフォームを構築することを決めたのです。システム構築期間はわずか2週間。Amazon EC2、Elastic Load Balancing、Amazon Route 53などAWSのあらゆるテクノロジを結集させてシステムを構築、世界各地のAWSリージョンからコンテンツを提供することで可用性の担保と負荷の分散を行い、数百万人の同時接続ユーザに対して「150Gbpsのトラフィック、8万の秒間リクエスト、画像サイズの総計150テラバイト」(シャムズ氏)を提供する環境を作り上げました。「キュリオシティが自分で自分を撮影した高解像度の画像を配信できたときは本当にホッとした」とシャムズ氏は振り返ります。なお、今回構築したソリューションのノウハウは、今後も他の惑星探査プロジェクトで応用されるとのことです。