とはいえ、その「万が一のトラブル」が起こったときに、「トラブル、来たあー!!」とばかりに小躍りして喜ぶような奇特な人は、きっと読者の中にはいないはず(ひょっとしたら、そういう「トラブルマニア」も中にはいるのかもしれないが……)。「ふざけんな!」「おいおい、勘弁してくれよ……」といったあたりが、一般的な反応ではないだろうか。
ベンダーのサポート部門では、そんなユーザーの憤懣やるかたない気持ちを真正面から受け止めなければならないのだから、さぞかしタフでブラックな職場なのではと勝手に想像してしまうのだが……果たして、実際のところはどうなのだろうか? ITベンダーのサポート部門では、一体どんな人たちが、どんな思いで仕事をしているのだろうか?
このあたり、なかなか外部の人間には実情がうかがい知れない世界なのだが、今回マイクロソフトのサポート部門で働く方々、中でもSQL Serverのサポートに携わる人たちに話を聞く機会に恵まれた。ここぞとばかりに、さまざまな本音に迫ってみた。
法人顧客向けのサポートサービス「Premierサポート」
まずお話をうかがったのは、日本マイクロソフト エンタープライズ&パートナーサポート統括部 業務執行役員 統括本部長の堀 和紀さん。
「2011年7月に、営業部門からサポート部門に移ってきたんですけど、来る前はもっと厳しい状態で、トラブルに巻き込まれて私自身も徹夜とか大変な目にあうんじゃないかと思ってましたよ!」
おっと、いきなりの本音炸裂! やっぱりわれわれ外部の人間と同様、マイクロソフト社内でもサポートの仕事ってそういう目で見られがちなのかも。では、実際に移ってきて、そうした印象は変わったのでしょうか?
「本当に、お客さまのためにさまざまなことに取り組んでいるんだなあと実感しましたね。同じ会社にいながら、なぜ今までサポートの仕事のことを知らなかったのだろうと、反省したぐらいです」
なるほど。では、そのあたりの内情は追々お聞きしていくとして、まずはマイクロソフトのサポートサービスのメニューや体制について、簡単に教えてもらうことにしましょう。何せマイクロソフト製品は種類が多いし、しかもコンシューマ向けから企業向けまで幅広く手掛けているので、サポート業務と一言で言っても、いろんな役割の人たちがいるはず。
「まず、お客さまを特定しないサポートサービスと、特定するサポートサービスの2つに分かれています」
お客さまを特定しない? 特定する?
つまり、こういうことらしい。お客さまを「特定しない」というのは、不特定多数の一般コンシューマに対するサポート。一方、「特定する」というのは、法人顧客に対して専任のサポート要員をアサインして、手厚いサポートを提供することなのだそう。で、後者のサービスは、「Premierサポート」という名前が付いている。
ちなみに堀さんは、法人顧客向けのPremierサポートサービスを束ねるお偉いさんの1人。堀さんが率いる部署には、どんな人たちが働いているのだろうか?
「私の部署には、約150人のタムのみんながいます」
タム? タムって何? ひょっとして、150人全員の苗字が「田村」……なわけないよね。正確にはタムではなく「TAM」、これは「Technical Account Manager(テクニカル アカウント マネジャー)」の略称だ。このTAMさんたちこそが、先ほど紹介したように、法人の顧客1社1社に対して専任で張り付く担当者なのだ。
「医者にたとえれば、かかりつけの主治医といったところでしょうか。患者さんとの密接なお付き合いの中で、日々の健康管理を総合的に診ていくのがTAMの仕事です。具体的には、何かトラブルがあった際にはお客さま先に駆け付けるほか、日々のシステムメンテナンスについてもビジネス的な見地からさまざまなアドバイスを行います」
なるほど、体調が悪くなったり、いい体調を保ったりするときに相談する「町のお医者さん」がTAMなわけだ。