オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア(クラウドOS)の台頭
AWSの独自のクラウドエコシステムを形成する動きに対して、オープンソースを採用しオープンなクラウド環境を構築し、エコシステムを形成する動きも活発化している。
2007年、米国カルフォルニア大学サンタバーバラ校でAWSのEC2と同程度のクラウド環境を大学内でも構築することを目的とした研究プロジェクトとして、EC2 APIと互換性のあるソフトウェア「Eucalyptus」が登場。これを機に、「OpenStack」や「CloudStack」、「CloudForms」「OpenQRM」「Abiquo」など多くのオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアが登場した。日本国内では2009年4月にあくしゅが開発した日本初のプロジェクト「Wakame-vdc」などがある。
クラウド基盤ソフトウェアは、サーバー、ストレージ、ネットワークなどを統合的に管理し、ユーザーの要求に応じてオンデマンドで指定されたスペックの仮想マシンやストレージの環境を構築できセルフポータルサービス機能を持つソフトウェアである。XenServerやKVM、VMware vSphereなどの複数のハイパーバイザーに対応し、IaaSレイヤーのクラウド環境を構築する。クラウド基盤ソフトウェアは、CMS(クラウドマネジメントシステム)やクラウドOSとも呼ばれる。
クラウド基盤ソフトウェアが注目され背景の一つには、パブリッククラウドにおけるビジネスや技術の進展の速さが挙げられ、サービス事業者やSIベンダが一から独自のクラウド管理ツールを開発していては、AWSをはじめとしたグローバルなクラウド市場のスピードに追いつき競争優位に立つことが難しい状況となっているためだ。 オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアを採用することで、クラウドに必要な機能を短期間で実装し、オープンソースであるがゆえにサードパーティーとのサービス連携を容易にし、さらに、オープンソースであることを活かし、独自のカスタマイズやサービスの拡充することで他社との差別化を図り、ユーザーニーズにあわせたクラウド環境を低コストかつ迅速な提供が可能となる。
オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアは、パブリッククラウドだけではなく、プライベートクラウドにも採用が広がりを見せている。企業では、パブリッククラウドと同じようなセルフサービスをオンデマンドで利用する環境を自社内で構築するプライベートクラウドを構築するニーズも高く、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアを採用することで、セルフサービスをオンデマンドで利用でき、さらに自社によるセキュリティ強化やカスタマイズも容易になり、自社のセキュリティポリシーにあわせたクラウド環境を低価格で構築することができる。
IT市場においてはSIビジネスの市場規模が縮小傾向にあり、大手SIベンダなどは従来のSIビジネスだけではなく、オープンソースソフトウェアの中でも品質や注目度の高いものについては、システムの構築から運用保守まで、ソリューションやサポートサービスを提供する傾向にある。オープンソースクラウド基盤ソフトウェアの機能充実や品質向上に加えて、ソリューションやサポートサービスの充実により、ユーザーもより安心して利用できるようになってきており、クラウド管理ソフトウェアの採用増加につながっていると考えられる。