ベンダー各社が急ぐ「オープンクラウドエコシステム」の強化
調査会社のIDC Japanは2013年6月6日、「国内オープンソースソフトウェアエコシステム市場予測」を発表した。国内における2012年のオープンソースソフトウエアのエコシステムの市場規模は6751億6200万円、2012年~2017年の年間平均成長率は10.2%で、2017年には1兆962億円に達すると見込んでいる。
IDCでは、このオープンソースソフトウェアエコシステムの市場成長を大きく牽引しているのは、OpenStackやCloudStackといったオープンソースのクラウド基盤構築/管理ソフトウェアや、OpenFlowといった仮想ネットワークの分野で、市場規模は2017年には551億、OpenFlowエコシステムの市場規模は329億円に達すると予測している。
これらのオープンソースを活用したパブリッククラウドとプライベートクラウドの構築は、2015年頃から本格的に普及していくと見られており、各事業者はオープンクラウドをベースに、パートナーとの提携を進め、オープンクラウドエコシステムの強化を急いでいる。
「オープンクラウド戦略」を発表し、オープンクラウドに急速に舵を切るIBM
IBMは2013年3月、IBMのクラウドソリューション「IBM SmarterCloud」をクラウドの仕様や規格にオープンスタンダードを採用した「オープンクラウドアーキテクチャ」ベースで構築し、ベンダーロックインのないオープンなエコシステムを形成する「オープンクラウド戦略」を発表し、オープンクラウドへの取り組みを加速させている。
5月24日から販売を開始した「IBM SmarterCloud Orchestrator」では、クラウド基盤ソフトウェアにはOpenStackを採用し、アプリケーションを管理するPaaSレイヤーでは標準規格のひとつであるOASIS TOSCAに準拠している。これにより、クラウド環境の迅速かつ柔軟な構築や運用の自動化、連携、移行などの容易性を確保し、セルフサービスポータル機能も充実させている。
IBMは6月4日には、パブリッククラウドサービスを提供する事業者の大手であるSoftLayer Technologiesの買収を発表した。買収手続きの完了は2012年第3四半期を予定している。買収完了次第、IBM Global Technology Servicesの組織内に、新たなクラウドサービス部門として「IBM Cloud Services Division」を創設し、SoftLayerを単独企業として配置し、新部門が管轄する予定だ。IBMでは今回の買収により、スタートアップや中小企業などの顧客層の拡大を図っている。
日本IBMは2013年6月11日には、ユーザーのワークロードに応じてITリソースの最適化と自動マッピング、つまり、ソフトウェアによって構成を自動化する環境を実現する「Software Defined Environment(SDE)」のコンセプトを発表した。第一弾としてネットワーク全体の仮想化をオーバーレイ方式で実現するソフトウェア「IBM Software Defined Network for Virtual Environments VMware Edition(SDN VE)」の提供を開始している。
日本IBM 専務執行役員の三瓶雅夫氏は、6月11日の発表記者会見の中で「徹底的にオープンなテクノロジーでもって、お客さまのシステムで稼働するワークロードを抽象化し、最適なリソースを継続的に自動でマッピングしていくことがSDEの狙い」とし、OpenStackやOpenDaylightといったオープンなプロトコルに対応し、今後IBMが提供するさまざまなソフトウェアや製品にこのコンセプトを実装していくという。