石巻の小学校の子供たちのように
「きのう石巻門脇小学校を訪れた時、ちょうど少年、少女たちが野球をやっていました。私たちが置かれた状況が、この写真に象徴されています。まだまだ被災の現場は元に戻っていません。それでもわれわれは、この子どもたちのように、明るく元気にこの場所で頑張り、少しづつでも復興につなげていきたい」
あの日から2年の3月11日、震災発生時刻の黙祷の後、主催者代表の佐々木賢一氏はこう語った。佐々木氏は地元企業、トライポッドワークスの代表であり、このプロジェクトの呼びかけ人である。
「ITで日本を元気に!」は、2年前の震災後の4月から行動を開始した。東北、東京のIT系の企業人、経営者を中心に、ITの強みを生かして復興の支援をおこなうプロジェクトである。当初は物資の支給からはじめ、被災地での通信環境の設定、仮設住宅へのPC環境の設置や、配布されたiPadの設定、ソーシャルを用いた情報発信の指導などの活動をおこなってきた。ノートPCなどのニーズはまだあるものの、通信や物質環境は整いつつあるという。
「当初は何から手をつけてよいかわかりませんでしたが、徐々に地域で良い形での支援活動ができてきました。今後は中長期的な視野で、復興に向けての基盤を整備していくことが目標です。地域どうしでの人たちの交流はまだそれほど活発ではありません。いろいろな人々を結びつけるハブ、触媒となっていきたい」
こう語るのは事務局の志子田有言氏。ITで東北を“先進的な田舎”にする思いを共有しているという。
耐災害ICTの研究が進んでいる
ITが自然災害を抑止することはできない。しかし、災害の被害を軽減する可能性はある。「耐災害ICT」の研究が、3.11後に進展している。
情報通信研究機構(NICT)の鳥澤健太郎氏は、「自然言語分析の研究者として、象牙の塔にこもるつもりだった。あってほしくはないが可能性がある“次の災害”に対処するために引っ張られた」のだという。
情報が滞ることで、人の心も滞る。今回の震災であらわになったのは、通信回線の寸断、デマや風評による被害である。そのために研究されているのが、災害に強いワイヤレス、輻輳に強いネットワークの研究状況、自然言語によるデータ分析などである。
たとえば、「透析が不足している」という発信に対して、自然言語分析で回答を引き出す。「仙台で透析が今受けられる病院は◯◯」という回答があったとする。状況が変わり「◯◯で透析が受けられなくなった」などの矛盾する情報を提示して、ユーザーに判断をさせる。こうした自然言語での回答システムの有効性を引き上げる研究成果について、鳥澤氏は発表した。