「Obama for America」とは、昨年行われた米国大統領選挙における、オバマ大統領の選挙本部のこと。この選挙、日本とは大きく異なり、最大限にソーシャルネットワークやインターネットを活用したものとして有名だ。実際にはそれらだけでなく、さまざまなITシステムが活用された。Obama for Americaが利用したITシステムの数は200を超える。そして、それらシステムが稼働していたのがAmazon Web Servicesのクラウドの上だった。
オバマ大統領再選のための選挙活動は40,000人を超えるボランティアによって支えられていた

ソリューションアーキテクトを務める
マイルス・ワード氏
Amazon Web Servicesが、会社としてオバマ大統領を支援していたということではない。Obama for Americaは基本的にボランティアによって運営される組織。ボランティアの数は40,000人以上。そのボランティアの1人に、Amazon Web Servicesのソリューションアーキテクトであるマイルス・ワード氏がいた。彼はITエンジニアとして、Obama for Americaの活動をサポートしたのだ。
「Obama for Americaで利用するシステムは、facebookやMySpaceなどから情報を収集しなければなりません。これはまさにビッグデータの活用であり、イノベーションが必要です。さらに11月7日の投票日に向かって、ユーザーの急激な増加にも対応しなければなりません。」(マイルス氏)
Obama for Americaでは、寄付を集める仕組みなど、世界で約30番目に大きいEコマースを運用することでもあった。当然ながら安全な支払いの仕組みも必要だ。さらに、200のアプリケーションの多くについてモバイル対応する必要もあった。扱うデータの種類もその分析方法も多くのものがまだ実証されたいないような新しい分析手法を必要としており、さらにそこで扱われるデータ量は、数千のサーバーに数百テラバイトのデータ処理の規模となる。そして、数十万規模の同時アクセスも予測される。
こういったシステム要求があるのに対して、予算はかなり限られていた。そして実施までには7ヶ月しか時間がなかったのだ。これではプロのエンジニアを雇うことはできない。結果的に、ボランティアのエンジニアが、日々システムを構築していくという体制となった。実際のボランティアのエンジニアは「平均年齢24歳くらいの若いエンジニアの集まりでした」とマイルス氏。その開発環境は「クレイジーな環境でした。うるさいしポテトチップのカスやコーラの空き瓶が散らばる汚いものでした」とのこと。
そんな環境に集まったボランティアエンジニアは、みな優秀だった。膨大な数のシステムを次々と開発し、それがすべてちゃんと機能したのだ。そのシステムを活用できたことで、結果的にはオバマ大統領の再選につながる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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