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新事業の成功確率を上げる「リーンローンチパッド」

事業創造を成功に導く「顧客開発モデル」スティーブ・ブランク特別講演レポート・後編

ビジネスモデルを改善し、成功確率を高める方法がある。起業教育の旗手スティーブン・G・ブランク氏の、3月19日青山アイビーホールで開かれたビズジェネ・カンファレンス Vol.3 事業創造を成功に導く「顧客開発モデル」での、講演の続報を紹介する。新事業の成功確率を上げる教育プログラム「リーンローンチパッド」が紹介された。前編はこちら。

従来型はビジネスプランの実行、リーン型はビジネスモデルの探索

 本カンファレンスの『「顧客開発モデル」-新規事業立ち上げの最新手法と実践プログラム・リーンローンチパッド』と題された同氏の特別講演だが、後半は新事業の成功確率を上げる教育プログラム「リーンローンチパッド」が紹介された。

 新事業は「ビジネスモデル」をどう探すかが鍵だが、その方法論をブランク氏が説く。

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写真.スティーブン・G・ブランク氏

 「100年来、日本でも米国でも経営戦略をどう実践するかをビジネススクールで教えてきた。しかし、スタートアップ/新事業は、実行より探索が先であり、既存事業とは異なる戦略やプロセスが必要とされる。新たなマネジメントが必要なのだ」とブランク氏は指摘する。

 「しかし、みなさんはラッキーだ。拙著に加え、アレックス・オスターワルダーらの『ビジネスモデル・ジェネレーション』やエリック・リースの『リーン・スタートアップ』など、スタートアップ/新事業についての新たなマネジメントを示す書籍が手に入る」と解決策があることを示す。近年の米国、特にシリコンバレーでの事業創造についての経験・ノウハウの集積は目を見張るものがある。

 ブランク氏が開発した事業創造の方法論は、次の三つからなる。

  1. ビジネスモデル
  2. 顧客開発モデル
  3. アジャイル開発

1.ビジネスモデル

 ブランク氏の事業創造のアプローチの1つ目は、ビジネスモデルだ。同氏は、アレックス・オスターワルダー氏らが提唱する「ビジネスモデル・キャンバス」の活用を勧めている。

図表1.9つの要素からなるビジネスモデル・キャンバス

 「経営学の教授達がこの20年いろいろとビジネスモデルについて議論してきたが、何十もの定義があって、これでは使えない。しかし、ビジネスモデル・キャンバスは、どんなビジネスでも紙1枚に収めて表現できるシンプルなものだ。ビジネスモデルは、どうやってどんな価値を創造して顧客に届けるかを示すものだ。スタートアップが悩まねばならないのは、プロダクトではなく、顧客、価値、マネー、パートナー、リソース、お金の使い方といった9つの要素からなるビジネスモデルだ」と、ブランク氏は指摘する。

 ビジネスモデル・キャンバスは、次の9つのビルディング・ブロックからなるシンプルなものだ。

  1. 顧客セグメント
  2. 顧客にもたらす価値(Value Propositions)
  3. チャンネル(顧客との接点)
  4. 顧客との関係
  5. リソース(人、モノ、金、知的資産)
  6. 主な活動
  7. パートナー
  8. 売上
  9. コスト

 ビジネスモデル・キャンバスはペーパー1枚で分かりやすく示す。だから議論しやすくなるし、スタートアップの進化の軌跡が時系列でとらえられる。ビジネスモデルといってもスタートアップによって、その言い方、表現の仕方はまちまちだ。それがあいまいだったり、人により受け取り方が異なっていたりもする。ビジネスモデル・キャンバスでは、共通のシンプルな枠組みに落とし込むことで、皆に分かりやすく、かつ議論しやすくなる。

 また、前編でも取り上げたピボット(事業転換)とは、顧客や技術などビジネスモデル・キャンバスの要素の1つか2つを大きく変えることである。たとえば、売上モデルをフリーミアムからサブスクリプション(定期購入モデル)に変えることや、市場や事業環境などとマッチするか、実験を重ねることでピボットをしてビジネスモデルを改良していく。

 起業家にとっては、この形式で書き出すことで考えの整理になる。そして、チームメンバーならびに外部の人とも議論をするベースとなる。だから、事業創造の次のパートである、顧客開発モデルによる仮説の検証がやりやすくなる。

図表2.推測(仮説)を事実にしていく“探索”

 またブランク氏は、「仮説(hypothesis)という言葉はもっともらしいが実際は推測(guess)のことだ。推測をビジネスモデル・キャンバスに落とし込み、これを確かめて、段階的に事実にかえていく。このプロセスをどう進めるかが大切」と言う。スタートアップでは分からないことが次々と現れる。案外と新事業の現場では、思い込みや直観がよく見受けられるが、これらはただの推測であり、ちゃんと検証しなければダメだということだ。

 「その会社で一番“デキル”人でも、多くの潜在顧客による集合地にはとてもかなわない。だから顧客開発モデルを使うのだ」とブランク氏は、“過信”を戒める。顧客と接触して推測をテストしていくことは非常に重要だ。といっても、細かいことにいちいち右往左往するわけではない。テストから得られたものを深く考えて新しいキャンバスをつくっていくのだ。

次のページ
プロダクト開発ではなく「顧客開発」、ウォーターフォールではなく「アジャイル開発」

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本荘 修二(ホンジョウ シュウジ)

本荘事務所 代表(新事業コンサルタント)、多摩大学(MBA)客員教授。500 Startupsメンターほか日米の企業アドバイザーを務める。ボストン・コンサルティング・グループ、米Computer Sciences Corp.、CSK/セガ・グループ、General Atlantic LLC日本代表な...

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