開発プロジェクトに暗雲が立ち込める……
ちなみに、EADsの初代バージョンの開発が始まったのは、2011年春のこと。開発プロジェクトが立ち上がった直接のきっかけは、膨大なメールのトラフィックを捌くためだったそうで。
「あけおめメールに代表されるような、短期間のうちに大量に発生する携帯メールのトラフィックがどんどん増大している状況を受けて、この大量メールの受け付け処理にインメモリデータグリッドが使えないかということで、製品開発プロジェクトが立ち上がりました」(杉本さん)
で、この開発プロジェクトの責任者に任命されたのが、この年の4月から主任技師(要は課長さんね)に昇進したばかりの梅田さん。そして、社内から選りすぐりの精鋭が集められた開発メンバーの中に、杉本さんと松本さんもいたわけだ。
ちなみに松本さん、それ以前はアプリケーションサーバ製品のサポート業務に携わってたそうで。いきなり分散KVSとやらのとんがった世界に飛び込むことに不安はなかった?
「私はもともと開発志望だったんですが、アプリケーションサーバの世界はもうある程度技術が確立されていますから、なかなか新規開発の機会がなかったんです。その点、EADsはまったく新規の開発プロジェクトでしたから、むしろ大歓迎でした。『来たー!』という感じでしたね!」
おお、モチベーションが高い! 一方、新米管理職の梅田さんだって負けてはいない。プロジェクトを立ち上げるに当たって、何ともユニークな取り組みを始める。それが、冒頭でちょっとだけ紹介した「おやつ会議」だ。
「まったく新しい製品を開発するわけですから、管理部門や検査部門、生産技術といったさまざまな部門と密接に連携を取りながら開発を進める必要があります。そこで、他部門のリーダークラスを毎日集めて、お菓子をつまみながら進捗状況の確認や課題の洗い出し、アイデア出しなどを行う『おやつ会議』を開催することにしました。まあ、ちょっとしたアジャイルのつもりだったんですけど、お菓子を食べるには口を開けないといけないから、自ずと発言も増えるかなという程度の軽いノリで(笑)」(梅田さん)
このおやつ会議、ちゃんと専用の「お菓子箱」まで用意して、空になったら管理職から1000円ずつお菓子代を徴収するというルールまで設けてたそうで。ちなみに初回の「仕入れ」は、梅田さんがへそくりの中から1万円を出資(太っ腹!)。
「この1万円を持って、僕と梅田さんとで近所のスーパーにお菓子を買い出しにいきました。でも……」(松本さん)
でも?
「梅田さん、プロジェクトが始まってすぐ、育児休暇でいなくなっちゃったんですよね……」(杉本さん)
はいーーーー??