意外に浅い、商用のRDBMSの歴史
商用RDBMSの歴史は意外と浅く、1980年代前半にIBMのメインフレーム上で稼働するSystem Rがその原型となり、その後1983年にDB2が誕生しました (正確にはDATABASE 2という製品名で、略称としてDB2と呼ばれた)。
RDBMSの最も大きな特徴はSQL言語という非手続型の言語が使われたことにあり、1980年代後半からSQLが国際標準のISOで批准されたことでその後急速に普及し、今ではほぼすべての企業が何らかの形でRDBMSを導入しています。
その後約30年の間に、CPUは16bitから32bit、64bitへと進化、クロック数は1,000倍以上に高まり、メモリやハードディスクの容量はMB単位からGB、TBへと拡張され、同時に劇的な低価格化が進んだこと、IT化が急速に進んできたのはご存じの通りです。
話をRDBMSに戻すと、1980年代後半から2000年頃までの主なポイントはパフォーマンス、スケーラビリティ、および可用性が注目点であり、いかに多くのトランザクション処理を実行できるかを各ベンダーが激しく機能や性能を競い、エンジニアはパフォーマンスチューニングやトラブルシューティングのスキルを競っていました。
しかし、前述の通りハードウェアとソフトウェアが進化し、劇的に価格が低下したことで、パフォーマンスの問題は比較的解決しやすい課題となりました。
ビッグデータの時代へ
一方で2000年以降は別の大きなトレンドが起こっています。
インターネットや高速無線通信、携帯デバイスの普及と、ソーシャルネットワークが爆発的に普及し、また各種センサーが生活のあらゆる場面に張り巡らされることで、データが爆発的に増え始めています。
いわゆる「ビッグデータ」時代の到来です。
従来は、業務データ中心にデータを「処理」、「蓄積」、「保護」することに注力していたのが、さまざまな場面でデータが湯水のように沸き起こり、これを如何にビジネスに活用していくか、あるいは膨大なデータの中から有益な情報を見出せるかといった、データを「活用」することに焦点が移りつつあり、その活用方法とスピードこそが他社との大きな差別化要因となりつつあります。
データを分析するソリューションとしてはDWHやBIなどはすでに広く知られるところですが、様々な調査結果によると本格的にデータウェアハウス導入している企業は全体の2割程度とあまり多くなく、大企業ほど導入意欲が高い反面、中堅以下の企業では極端に低い傾向があります。
その要因としては、本格的かつ大規模なアナリティクスをやろうと思うと数億円の予算が必要になり、一部の大企業や特定の業種に限られていたことがあげられます。
また、分析を経営に活かすためには多くの業務プロセスの変革が必要になることから、強力なリーダーシップやトップダウンでの導入が求められ、一般的にITリテラシの高くない経営層の場合は導入のハードルが極めて高いのが現実です。
一方で、データを預かるIT部門にとって、多くのバックログを抱えながらセキュリティ対策や災害対策などの負担が多く、抱えているプロジェクト以外に積極的なデータ活用を推進する動機付けが乏しい、という難しい現実があります。
情報格差をどう縮めるか
ここ数年のトレンドとして、分析対象のデータは従来の定型的な数値データから、ソーシャルメディアなどの非定型データやストリーミングデータなど、いわゆる「ビッグデータ」分析へと拡大しつつありますが、これらもすでにデータウェアハウスを導入済みの大企業が市場を牽引すると考えられます。
しかし、このままではますます情報武装を進める大企業と十分な予算や人材を持たない中堅以下の企業の情報格差がますます広がることが懸念されます。
この情報格差を一気に縮めることができるのが、IBMが2013年6月より提供を開始した DB2 10.5に搭載されたBLU Accelerationです。これにより、わずか数百万円程度の予算から、大企業に引けをとらないアナリティクスが実現できるようになり、多くのお客様から新たなビジネス機会の創出に向け、大きな期待が寄せられています。
ところで、「カンブリア爆発」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、今から約5億年ほど前のカンブリア紀に、それ以前には見られなかった高度な多細胞生物が一気に生まれたという説で、新たに「眼」を持つ生物が生まれたことが一因と考えられています。
これらの有眼生物はそれまでの単細胞生物とは異なり、積極的に他の動植物を捕食したり、危機を回避する行動を取ることが有利に働き、爆発的に繁殖と進化を遂げたと言われています。
これは、変化の激しい現在のビジネス環境にも当てはまります。
すなわち、膨大なデータの中から新たなビジネス機会を見つけ出していち早く「捕食」したり、危機を察知して早期に回避行動をとるための「眼」の重要性がますます高まっていると言えます。いわゆる「見える化」です。
ビッグデータの活用が、企業にとってきわめて強力な「眼」を持つことを意味し、分析対象のデータが多ければ多いほど、分析のスピードが早ければ早いほど競争優位に立つことができるのです。より多くの「眼」を持ち、より早く、より正確に、より遠くを見通すことが競争優位を高めます。
逆に「眼」を持たないことがどういう危険性をはらんでいるかは、容易に想像することができます。