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ソチ五輪冬季大会を支えるネットワークには何が必要か

edited by DB Online   2014/01/22 15:00

 東京での五輪開催に注目しがちだが、来月にはロシア ソチでの冬季大会があり、2016年にはブラジル リオデジャネイロで夏季大会、2018年には韓国 平昌で冬季大会が開催される。その後がやっと、東京なのだ。回を追うごとに、五輪はさまざまな進化をしていくはず。その中でも著しく変わりそうなのが、大会を支えるITの仕組みだろう。先日、来月のソチ大会でネットワーク機器のオフィシャルサプライヤーを務める、アバイアに話を訊く機会があった。オフィシャルサプライヤーなので、聖火リレーにも参加、当日は実際に使われたトーチの展示も行われていた。本物のトーチには傷や汚れもあり、実際に使われた様子がリアルに想像された。

五輪に求められる柔軟でセキュアなネットワークを支えるアバイア

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ソチ五輪の聖火リレーに使われたトーチ

 アバイアは、前回2010年の冬季五輪バンクーバー大会でもネットワーク機器を提供している。4年経過してバンクーバーとソチでの大きな違いは、ネットワークの比重が有線から無線へとシフトしたこと。無線ネットワークに接続されるのは、スマートフォンやタブレット、その他無線機器などがある。それらは、大会本部側で準備するものだけでなく、BYOD、つまりは選手やメディア関係の人間が持ち込む無線機器も多数存在する。

 その他の変化としては、ロシア国内で行われるIPマルチキャストによるライブ映像配信がある。つまり、ロシアにいれば、テレビ放映される人気競技以外も競技会場に行かずとも観戦できるわけだ。このようなライブ配信は、東京での五輪開催時により進化した形で実施されるだろう。2020年なら、どこにいても気になる競技はリアルタイム観戦できるかもしれない。

 五輪大会のような世界的なスポーツイベントにおいて、ネットワーク構築で課題となるのはその構成が複雑にならないようにすること。そして当然ながら、セキュアであることも重要。さらには、ピーク時のトラヒックにどう対処するかも課題となる。今回のソチ大会では、100万人以上の観客が現地を訪れる。さらに数千のスタッフ、5,500人ほどのアスリートが参加。記者などのメディア関連も、3,000名以上が取材に訪れる。彼らがすべて、この五輪開催期間中だけ、良質なネットワークを必要とする。

 トラヒックのピークを予測することは難しい。人気競技の決勝戦で勝敗が決する瞬間は大勢がアクセスするだろう。競技後には、メディア担当者がいち早く映像を各国に送りニュース化したいと考える。これらは、実際の競技内容にも大きく影響されるはず。そういった変化に柔軟に対応できるネットワークが求められるのだ。

 そのネットワークのサプライヤーにアバイアが採用されている1つの利用が、柔軟性あるFabric Connectネットワークだということ。これは、同社のSPB(Shortest Path Bridging:IEEE 802.1aqとして標準化)という技術によって実現されている。SPBによりエンド・ツー・エンドでネットワークの仮想化を実現しており、シンプルで柔軟性の高いネットワークが構築できる。

Avaya Fabric Connectによって構築されたソチ五輪ネットワークのイメージ
Avaya Fabric Connectによって構築されたソチ五輪ネットワークのイメージ

 このシンプルさは、五輪大会のような場合に極めて重要だ。シンプルなので、構築するのに手間も時間もかからない。設定は、エッジスイッチにだけ行えばいい。なので、これもまた設定作業の時間を短くする。これらは、構成を変更する際も同様だ。また、IPマルチキャストを実現する際にも、SPBならば利用するプロトコルはIS-ISだけでいい。これが現状のIPマルチキャストなら、L2 Protocol STPやMulticast Protocol PIMなどがあり、面倒な設定をしなければならない。

 さらに仮想化で、自由なトポロジーを組めるのもメリットが大きい。これはネットワークの柔軟性にも、セキュリティの確保にも、そして可用性の高さにも貢献する。物理的にはシンプルな構成でも、ネットワーク的にはセキュリティを考慮した複雑な構成をとることができるのだ。

 このような柔軟性の高いネットワーク仮想化は、五輪のような短期間で大規模、そして予想しにくいネットワークに最適だ。とはいえ、じつはこのような要求は、いまやごく普通の企業も同様だ。会社が合併や買収を行う、海外に進出する、あるいは逆にいち早く撤退するなど、組織的な変化はどんどん起こる。そういった激しい変化があっても迅速に安全なネットワークを構成しなければならない。時間軸や地理的要因こそ五輪の大会とは異なるかもしれないが、企業の必要とするネットワークも基本的な考え方は同じなのだ。

 ところで、冬季五輪ならではの苦労はないのかと訊ねたら、バンクーバーの際には除雪をする際にケーブルを切断してしまうトラブルが発生したとのこと。これはすでに経験済みなので、今回はそういった面についてもしっかりとした対応がなされているだろう。こういう現場の経験の積み上げも、大きなスポーツイベントをスムースに運営するには重要だろう。



著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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