学部別結婚率8%を誇る女子大でデータベースに専念
大学生活を女子大で過ごした長江さん。専攻は理学部情報科学科でずばりITやソフトウェアを学ぶ学科だった。ただし新設からまだ5年という若い学科で、別学科の先生が講義を持つこともあったという。
「全員女子でしたから、(男性に)甘えたり頼らずできるようになったのはよかったですね。力仕事はできる範囲で。サーバーのバックアップは当番制で。泊まりがけの作業もありましたが、女子大なので親も安心していたようです(笑)」(長江さん)
女子大ならではというべきか。新入生向けに在校生が作成した学科案内冊子には、なぜか学科別結婚率が記載されていたという。平均して5~6割のところ、長江さんの学部では「8%」という著しく低い数字の学科もあって、入学間もない長江さんは「この学部にいると結婚できないの?」とちょっぴりショックだったそうだ(学生が作成した冊子のため、データの信憑性は定かではない)。
年を追うにつれ学科には徐々に教員が増えるなど、環境が充実してきた。長江さんは「一通り研究したい。究めたい」とマスターに進む道を選んだ。卒論から始めた研究ではGUIで設計した処理フローをSQLに変換するツールの開発をしていた。Cでプログラミングし、データベースはPostgreSQLを使った。ユーザー定義関数をデータベースに組み込むようなもので、PostgreSQLにも調整を施す必要があった。
発想としては現在、某社製品に組み込まれた新機能に似ているという。分析のためのユーザー定義関数をエンジンに組み込むものだ。長江さんが研究していたものが別メーカーで実装されて「先を越された」という気持ちもありつつ、当時の自分の研究が時代を先取りしていた証でもあるので少し感慨深いようだ。
修論も卒論の延長で研究していたところ、先生の様子が少しせわしないように見えた。「心ここにない」かのような。そうしたら先生は長江さんがマスター2年目になる年から渡米するという。
「私の研究、どうなっちゃうの?!」
長江さん、ピンチ。しかし2年目からはデータベース学界の重鎮でもある増永良文教授が着任し、長江さんを指導することになった。ただし研究内容は一新。加えてマスター2年目なので修了まで残り1年の間に研究成果を出さなくてはいけなくなった。
新たな研究内容は「時空間データベース」。モーションキャプチャをイメージするといいかもしれない。時間を経て変化する空間の情報をデータベースに格納し、その可能性を模索するというもの。恩師の座右の銘は「地球まるごとデータベース」。当初はなんでもデータベースに詰めこもうとするなんて発想からして信じがたかったが、ビッグデータ時代の到来とともに、学生時代に展望していた世界が徐々に現実になっていくのをひしひしと感じているそうだ。