「ビッグデータ」は業務や業界に特化した言葉へと分岐・発展していく
--「ビッグデータ」という言葉がはやりだしてもう数年が過ぎました。
あらためて経緯を振り返ると、「ビッグデータ」というキーワードは2010年から注目され始め、2011年にITベンダーが使い始め、2012年にビジネス層に伝わり始めました。しかしまだ言葉が踊っていた感があります。しかし2013年でトーンが変わってきました。ビジネスの計画を立てるうえでどう活用すればいいのか、業務を見すえて咀嚼(そしゃく)しようとする人が増えてきたように思います。
キーワードとしては「ビッグデータ」は2013年いっぱいくらいで廃れるころかと思っていました。意味する範囲が広すぎるので、より具体的なキーワードへと派生するかと思っていたのです。「ユビキタス」なら「CGM」、「Web 2.0」、「ソーシャルメディア」と派生したように、業務や業界に特化した言葉へと分岐や発展していくのではないかと思います。
--あらゆる分野でビッグデータが話題になっています。
データ活用分野で見ると、大きく分けて3つあります。分かりやすく、取り組みやすいのはプロモーションを中心としたマーケティング。フロントですね。次にIoT(Internet of Things)に近くて工場における保守や生産性のためのバックエンド(処理)。それから今後伸びていくか疑問ですが、期待を込めて挙げると社会課題や行政課題を解決するためのデータ活用。こうしたテーマは伸びていくのではないかと思います。
--これから重要性が増すデータの種類は?
間違いなくマシンデータ、機械由来データでしょうね。例えば体重計、空調、照明、その他の家電が急速に伸びています。大型機械の保守のためにデータ活用するような場面ではかねてより使われていましたが、家庭用機器でもその活用が進むでしょう。
関連のデータをとるためのデバイスはまさに百花繚乱(ひゃっかりょうらん)です。私もWithingsの活動量計を携行し、Wi-Fi接続している体重計で体重を記録しています。時間帯毎の活動量が可視化されるだけでも、やる気になりますし、頑張ると褒めてくれる。運動量と体重の増減の相関性が分かるようになっていて面白いです。
当初冗談交じりで使い始めましたが、大発見がありました。この活動量計で睡眠の量と深さも分かります。飲んだ夜は眠りが浅い(笑)。明確に結果に出てきます。
--飲んだ方が眠れそうな気もしますが(笑)。
酔っ払って眠るのは「睡眠」というよりは「気絶」で、身体は休まっていないそうです。
米国では飲んだ量を計測するために、飲酒運転のチェック用に警察が持っている機器の簡易版のようなデバイスも消費者向けに販売されています。タバコもしかり。喫煙状況を可視化するBluetooth接続の電子タバコもあります。吸った本数だけでなく、吸った回数、推計されるニコチン摂取量の可視化ができます。これまで定量化できなかったものが続々と定量化できるようになっています。
--フォークに加速度センサーをつけたものもあるとか。
HAPILABSが開発したHAPIforkですね。センサー活用の好例です。フォークの動きからがっついて食べているかどうかが分かり、食事のペースを改善するというものです。とるに足らない加速度センサーのデータから減量につながる価値のある「情報」が引き出せると目を付けたところがすばらしいと思います。
いま安いセンサーは多量にあります。ここで使われている加速度センサーも高価なものではないのです。センサーデータからビジネスにつなげるためのヒントが詰まった好例だと思います。
「日々を健康に過ごす」という1つの目的のためには1つのデータを見ているだけでは達成し得ません。活動量、体重、睡眠の長さや深さ。日々の食事も関係するでしょう。様々なデータをクラウドに集約して可視化すると効果が高くなります。そのためデータ活用とヘルスケアは相性がいいです。ますます競争が激しくなる分野だと思います。
--多様なウェアラブル端末やデバイスが出てきて、健康管理が変化してきそうですね。
機械由来データの活用ではホームオートメーションも面白い分野です。エアコンの自動節電など。先日GoogleがスマートデバイスのメーカーNestの買収を発表しました。リモコンがユーザーの好みの温度を学習したり、人がいないと検知すると電源をオフにしたりします。アメリカではすでにホームオートメーションが流行っていて、米国のAmazon.comでは「ホームオートメーション」のカテゴリができて関連する様々なデバイスが販売されているくらいです。