オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアとオープンクラウド・エコシステム
クラウドコンピューティング市場は、AWS(Amazon Web Services)、Salesforce、Google、Microsoft Azure などクラウドネイティブのクラウドサービス事業者が市場をリードしている。一方、OpenStackやCloudStackに代表されるように、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアを採用する事業者が増え、オープンなクラウドエコシステムの動きも広がっている。
調査会社のIDC Japanは2013年6月6日、「国内オープンソースソフトウェアエコシステム市場予測」を発表し、国内における2012年のオープンソースソフトウェアのエコシステムの市場規模は6751億6200万円、2017年には1兆962億円に達すると予測している。この調査でIDC Japanは、オープンソースソフトウェアエコシステムの市場成長を大きく牽引している要因として、OpenStackやCloudStackといったオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアの台頭を挙げている。
オープンソースを活用したパブリッククラウドとプライベートクラウドの構築は、2015年頃から本格的に普及していくと見られ、各事業者はオープンクラウドをベースに、パートナーとの提携を進め、オープンクラウドによるエコシステムの強化を急いでいる。
OpenStackとCloudStackを中心に、オープンクラウドの動向について紹介する。
1500以上の開発者が参加するOpenStackプロジェクト
OpenStackは、米航空宇宙局(NASA)の独自クラウド基盤である「Nebula」をベースに、Rackspaceと共同で開発されたプロジェクトで、現在は完全なオープンソースとして公開されている。フルオープンな開発スタイルと多くの企業が参加する活発なコミュティーが強みだ。2014年4月1日現在で135カ国1500人以上の開発者が貢献している。
2012年9月にはLinux FoundationをモデルにOpenStackの管理団体となる非営利団体「OpenStack Foundation」を発足し、AT&T、HP、IBM、Rackspace、Red Hatなどのプラチナスポンサーなど約140の企業や団体が参加している。
2013年10月17日には、最新版となる「OpenStack 2013.2」(開発コード「Havana」)を公開し、約400もの新機能が追加されている。2014年4月中には、開発コード「Icehouse」の公開が予定されている。
日本では、2010年10月21日のOpenStack第1版(Austin)のリリースに合わせ、OpenStackの国内普及活動を行うユーザコミュニティ「日本OpenStackユーザ会(JOSUG)」が設立されている。2013年2月13日と14日には、日本OpenStackユーザ会主催による「OpenStack Days Tokyo 2014」が開催され2日間でのべ1,100名が参加している。
アジア各国のOpenStackユーザ会との連携も進め、OpenStack Foundationを通じて、各国のユーザ会の「アンバサダー」が窓口となり、技術情報やユーザー事例の共有などを行っている。
商用利用でリードするCloudStack
CloudStackは、旧サン・マイクロシステムズ開発責任者らが設立した米VMOpsが開発した。2010年のVer2.0 からオープンソース化し、社名をCloud.comとしている。2011年7月には、Citrix Systemsが買収した。2012年4月に、オープンソースソフトウェアの開発や普及推進を図る非営利団体Apacheソフトウェアファウンデーション(以下、ASF)に寄贈され、「Apache CloudStack」としてリリースされ、2013年3月にはトップレベルプロジェクト(TLP)に昇格している。
2014年3月25日には、「Apache CloudStack 4.3」が5か月ぶりにリリースされ、KVM、XenServer、VMware、LXC、ベアメタルに加えてMicrosoft のHyper-Vにもサポートした。CloudStackは安定した機能と操作性の高いWebインタフェースが特徴で、エンタープライズ分野およびクラウド事業者での導入実績が多い。
CloudStackも「日本CloudStackユーザ会(JCSUG)」を発足し、2014年3月6日には「CloudStack Day Japan 2014」を開催し、NTTコミュニケーションズ、IDCフロンティア、KDDI、シトリックス、デル、日立製作所、日商エレクトロニクス、富士通、ユニアデックスなど、17社の企業や団体がスポンサーとして参加し、商用ベースでのエコシステムの動きが加速している。