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週刊DBオンライン 谷川耕一

3年目を迎えたPGEConsの活動は順調に拡大中


 今回はPostgreSQLの話題を。もう1ヶ月以上経過してしまったが、ミッションクリティカル性の高いエンタープライズ領域へのPostgreSQLの普及を推進することを目的として設立されたPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム、通称PGEConsが4月25日に都内で2013年度の活動報告会を開催した。2年間の活動を終え、参加社数は43社となり、情報配信先も1,000人を超える規模となっている。コンソーシアムの理事長で日本電信電話株式会社 オープンソースソフトウェアセンタ センタ長の岩田雅彦氏は、「仕事ではなく自発的に集まってやっていこう、そういう形で成果が出てきています」と言う。その結果となった2年目の成果も600ページを超えるドキュメントしてまとめら、同コンソーシアムのWebサイトですでに公開されている。

2年目の活動成果は600ページを超えるドキュメントに

PGEConsの理事を務める岩田氏
PGEConsの理事を務める岩田氏

 初年度の成果もかなりのボリュームあるものだった。これは参加した会員の、かなりの時間と労力を使った結果でもある。結果的には、現場のエンジニアなりにとって役立つ実践的なものとなっている。会員各社が持ち帰り実際に業務で使える資料となっており、もちろん参加していないユーザー企業にとっても十分にためになるものだ。かなり立派なものが出来上がったので、書籍なりにして販売したほうがいいのではとの声もあるそうだ。出版社が編集で手を入れれば、良書ができることは間違いないだろう。

 今後、PGEConsの活動の結果ドキュメントという形ではなく何らかのソフトウェア的な成果物が出てきた場合にどうするのか。PGEConsとしては、著作権の関係からオープンソースとして公開するのは難しい状況にある。それに携わった人たちが有志として公開するなどの方法を、現実的には検討することになりそうだ。

 2014年度は、新たにTISとLPI-Japanが追加され、運営委員会は12社に拡大した。それ以外の部分での組織的な変更はとくにない。2014年度の活動としては、今後開発コミュニティーへのフィードバックをどうしていけばいいのか、その具体策について検討を開始する。また、せっかくの成果をさらに広めていくために、スポンサー制のセミナー開催なども検討するとのことだ。

 秋に開催していたワーキンググループ活動の中間報告会については、エンドユーザーにもっと参加してもらいたいと言うことで事例中心のセミナーに変えていく。この裏には、秋の段階で活動の中間報告をまとめて発表するのは、ワーキンググループ参加者にとってはなかなか荷が重いという事情もあるようだ。

 今後は、より幅広い層にも参加して欲しいとPGEConsでは考えている。そうすることで、PostgreSQLのステークホルダーを拡大する。そのためには、PostgreSQLを知らないようなコミュニティーにもリーチする活動を今後は増やしていくことになる。

 ワーキンググループの活動は、これまではLinuxプラットフォームでの検証が中心だった。今後はLinux以外の環境での性能検証も行う。具体的にはWindowsの仮想マシンの上でどのような性能が発揮できるのかも検証していきたいと考えている。このあたりも、ステークホルダーの拡大につながる動きの1つだろう。商用データベースからの移行検証についてはかなりのノウハウがまとまりつつあるが、今後はユースケースを元に移行のシナリオという形で課題を検討していくとのことだ。

 PGEConsの活動報告を聞いていると、急激な拡大というわけではないが、確実にエンタープライズ領域でPostgreSQLの採用が増えているだろうことがうかがえる。現状は商用データベースからの移行、それもコストが安くなるのではということがきっかけでの乗り換えがおもな理由だろう。コスト削減については、たしかにソフトウェア・ライセンスの費用は削減できる。しかし、専門家からサポートを受けたり移行のためにアプリケーションの改修などを行ったりすればそれなりにコストはかかる。今後はコスト削減だけでなく積極的な理由でPostgreSQLを選択する動きが出てくれば、本格的なPostgreSQLのエンタープライズ領域での利用拡大につながっていくのではと思うところだ。

PostgreSQL 9.4ではNoSQL機能が強化

 さて、Oracleの代わりにではなくPostgreSQLだからこそ選択する。そんな理由の1つになりそうなのが、PostgreSQLのNoSQL機能だ。現在ベータ版として提供されているPostgreSQL 9.4では、バイナリJSON型がサポートされている。これにより、JSON型のデータを扱うドキュメント指向型データベースとして、本格的にPostgreSQLが利用できるというわけだ。

 ドキュメント指向型のNoSQLデータベースとしてはMongoDBが有名だ。実際、大手企業もOracleなどのリレーショナルデータベースと共存、あるいはそれを補う形でMongoDBを採用する動きは米国を中心に活発化している。専用のMongoDBを新たに導入するのでももちろんいいが、それで企業なりの環境からリレーショナルデータベースがなくなるわけではない。結局はそれらを連携させる必要も出てくる。

 そうであれば、1つのデータベースの中でリレーショナルデータもドキュメント型のデータも扱えるに越したことはない。実際、IBMではMongoDBと協業して、リレーショナルデータベースであるDB2にJSON型のデータを扱うための機能を実装しつつある。1つのデータベース、それも使い慣れたもののなかで2つの種類のデータをシームレスに扱える。機能的にはデータベースが別々でも構わないだろう。むしろそのほうがパフォーマンス面などでは有利な点も多いはずだ。しかし、バックアップや災害対策などを考えれば、日常的な運用管理手順が1つに統合できるメリットはかなり大きくなる。

 エンタープライズのリレーショナルデータベースの世界で先行するOracle Databaseに追いつけ追い越せももちろん重要だ。しかしながら、PostgreSQLが彼らを実際に追い越すことは難しい。であれば、PostgreSQLらしさを発揮し、独自の良さを追求するところもっと出てきて欲しい。そういうところが目立ってくれば、前述のPGEConsの活動も新たな局面を迎えることができるのではないだろうか。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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