今回の会計基準は施工者(受託側)の会計変更が定められており、対応に関わる企業または組織は思いのほか多い。システムインテグレーション企業では経営者、経理部門、営業部門そして開発部門がそれぞれ対応を実施しなければならない。また、工事契約に関する会計基準である以上、ユーザー(発注側)にもある程度の心構えは必要である。ここからはそれぞれの立場における留意点について提言する。
ユーザーも無関係とは言い切れない
「業者側の会計の話だから我々には関係ない」というコメントを耳にしたことがある。至極当然のことと筆者も最初は思ったが、少なからずユーザーにも影響があることをご認識いただきたい。
契約の交わし方が変わる
最も影響があると思われるのが契約の取り交わし方であると筆者は推測している。端的に申し上げるとフェーズごとに契約書を交わす形態になる可能性が高くなる。具体的には、RFPによる提案依頼から発注までの流れは変わらないが、システムの仕様を決定する要件定義・基本(概要)設計までをコンサルティングのような委託契約で締結して実施し、システムが賄う業務範囲(スコープ)と仕様が確定されてから開発作業に対する請負契約を締結する。さらに従来通りに検収後の保守契約を締結するといった感じである。
こういったフェーズごとに契約を分ける方法は特に目新しいものではなく、既に実施しているシステムインテグレーターも多いと聞くが、工事契約に関する会計基準の施行に伴って、より多くの企業が“成果の確実性”を明確にする為にこの方法を採用する可能性がある。システムの要件定義から開発までを一括で発注した際に、契約の分割を発注先のシステムインテグレーターからお願いされることがありえる、ということをご記憶に留めていただきたい。
支払いのタイミングが変わる?
また、あくまでも可能性の話であることをあらかじめ強調させていただくが、仕様確定と開発の契約が分割されることで、契約ごとに支払いが発生するケースが考えられる。その場合はユーザー側での予算確保の際に仕様確定と開発の費用を明確に分けて申請した方が良いかもしれない。
当然、契約が分かれるのであればそれぞれについて見積もりが提出されることになるが、仕様確定だけで当初の予測を大幅に上回る時間を要してしまった場合など、追加予算の申請をせざるを得ない事態になった際にある程度の説明がしやすいからである。
(追加費用が発生することが心情的に受け入れられるかどうかは別にして)本当にその様な事態になった場合には、開発費用にも影響があるため、スコープを限定するなどして開発の範囲を制限するといった総合的な判断がユーザーにも必要となると推測される。
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熱海 英樹(アツミ ヒデキ)
2003年2月マイクロソフト入社。Visual Studio、BizTalk Server の製品マーケティング担当を経て、現在は Visual Studio Team System の営業担当として主に技術面での訴求を行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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