ビッグデータ分析結果の使い方まで提案する
フリーランスのIT記者というまったくの異業種から転職してデータ分析の仕事を始めたオウケイウェイヴの羽野三千世氏。オウケイウェイヴには、2000年からの15年間Q&Aサイトを運営した結果である3,000万件のQ&Aのデータベースがある。このQ&Aのデータには、質問、回答、お礼という3種類があり、それらに加え利用者の登録時の属性情報も蓄積されている。
「Q&Aサイトの利用では、悩みを解決するために自分の収入であるとか家庭の情報など、アンケート調査などでは収集できないより細かな情報が収集できます」(羽野氏)
人は問題解決のためなら、必要な情報を開示する。結果的にオウケイウェイヴには、他では得られない個人の情報を使ってデータ分析を行うことができるのだ。
利用者の質問と答えに価値があるのは当然だ。しかし忘れられがちな、お礼にも価値はあるという。たとえば、適切な解決方法が出なかった場合、お礼の言葉とともに「この問題は解決できないのですね」という記述がなされる。この「課題が解決されない」ことは、解決策を提示できれば企業にとっては新たなビジネスになるチャンスとなるのだ。質問と答えを分析して世の中の動向や人々のニーズを見つけ出すことも重要だが、解決策がないケースを分析して新たなビジネスチャンスを見つけるのも価値あるデータ分析なのだ。
このようにオウケイウェイヴでは、膨大なQ&Aデータに対し外部の情報なども組み合わせてテキストマイニングを中心とした分析を行っている。2013年夏から始まった企業からの依頼に応える形でデータを分析した結果をレポートにして販売するビジネスは、1年足らずで10数件の実績を上げたとのこと。このデータ分析のビジネスは順調に拡大している。
データ分析の仕事をスムースに行うためには「分析に集中できる環境を作ってもらうことが重要です」と羽野氏は言う。個人情報の管理、それを扱う上でのリスクの管理の体制などを会社側で整えてもらうことで、分析者はノビノビと分析できるようになる。
また、顧客から信頼を得るための分析のテクニックとしては「分析結果の使い方まで示して始めてデータ分析の仕事に対して顧客は対価を払ってくれます」と言う。高度な分析手法を使って結果をレポートにするだけでなく、それをどう顧客のビジネスに生かせばいいかまでを考える。「顧客企業の具体的なアクションプランに落とし込んで提案することが重要です」と羽野氏。データだけを見るのではなく、依頼してきた企業の背景なども考えてレポートする。この応用性もデータサイエンティストに求められるスキルなのだろう。