今度はシンガポールを拠点に世界を目指す
そんなインフォテリアはここ最近右肩上がりで売り上げを伸ばしており、84.7%という極めて高い売上総利益率をたたき出している。
「粗利率が極めて高い、これは受託型のソフトウェア開発ビジネスでは考えられないものです」
インフォテリア CEOの平野洋一郎氏は、経営目標として70%以上という高い売上総利益率を経営目標にしており、それを堅持していることをアピールする。主力製品であるASTERIA WARPはEAI(Enterprise Application Integration)、ESB(Enterprise Service Bus)の市場シェアでは47.1%で国内No1だ。「海外勢が強いソフトウェアの世界では珍しい存在」だと言う。
今後クラウドがさらに普及する時代になれば「企業のアセットはデータだけになる」とも言い、そうなればさらにクラウド間連携の強化は重要となり、ASTERIA WARPのようなデータ、システム連携の仕組みがクラウドアプリケーションの構築基盤になるとのこと。
もう1つの製品であるHandbookも2014年3月時点で650件の導入実績がある。売り上げは前年比で122%、こちらもエンタープライズモバイル管理の市場シェアではNo1となっている。世の中にはさまざまなファイル共有の仕組みがあるが、利用者は制約なくファイル共有ができてしまい情報漏洩の危険性も高い。さらに管理者はその共有状況を把握することも困難という課題がある。Handbookであれば管理者が責任を持って共有の状況を管理できる。そういった点がHandbook普及の要因でもある。
この2つの国内No1の製品を持って、ミッションにあるようにインフォテリアは世界を目指す。海外拠点は香港、杭州、上海、カリフォルニアにすでにあり、2014年7月に新たにシンガポール拠点を開設した。このシンガポール拠点のCEOには、平野氏自らが赴任する。
「世界のソフトウェア市場において、日本の割合は縮小傾向にあります。日本で1番ではダメです。世界に出なければなりません」(平野氏)
じつはインフォテリアは、これまでに2度北米に進出した経験を持つ。しかし、2度ともそれはうまくはいかなかった。今回のアジアを中心とした海外展開は、3度目の挑戦だ。そのために、大きな投資もする。
「新たに8億円の資金を調達し、手持ち資金と合わせ11億円を海外投資にまわします。これにより現在3%しかない海外売り上の割合を2020年には5割超にする予定です」(平野氏)
海外事業に知見のある社外取締役も新たに就任する。元リコー・ヨーロッパの会長兼CEOでリコー・アジアパシフィックの社長も務めた齋藤周三氏、シリコンバレーに本社を置き世界各地に拠点を持つベンチャーキャピタルのCEOであるAnis Uzzaman氏の2人だ。「日本が頭打ちだから海外に出て行かざる得ないではなく、日本の価値を世界に伝えたいという意志が必要です」と平野氏。
今回の世界展開ではパートナー戦略が大事だとも言う。過去2回の海外展開の失敗は、自分たちだけでなんとかしようとしたところにも原因がある。新たに日本から参入するのが難しいのであれば、現地のビジネスを分かっているところと積極的に組んでいく。「多くの方々と組んでいくことが重要です。将来シンガポールにヘッドクォータ機能を移すことも視野に入れ、組織を越え壁を越えてやっていく。そのことに共感してくれるところと手を組んでいきます」と平野氏。
日本はソフトウェアを輸出する国になれる。それで世界に貢献できる。ソフトウェアは輸出産業だと言い切る平野氏に、3度目の正直となる海外展開ビジネスの成功を期待したい。