データ容量の伸び代は…
「世の中のデータ量の増加とハードディスクに記録できるデータ量にはギャップが出ており、それはさらに拡大しています。なので適材適所で大容量のテープ装置を使う必要があるのです」
こう語るのは、日本IBM 研究・開発 システム・テクノロジー開発製造 ストレージ・システムズ開発担当の佐々木 昭光氏だ。
2000年くらいから、テープ装置のデータ容量は年率40%もの伸びを示している。それだけの進化を続けていても、1ビットのデータを納めるためのテープスペースにはまだまだ余裕がある。対するハードディスクは容量増加については「苦戦しています」と佐々木氏。
すでに1ビットあたりのデータを記録するスペースはかなり小さくなっており、ディスクストレージの容量の伸びは8%から12%程度に止まるとも予測されている。つまりデータ容量の伸び代は、テープにかなり部があるのだ。
IBMのテープ・ストレージは日本で開発
そんなテープ・ストレージの開発に注力しているベンダーの1つがIBMだ。それもテープ・ストレージの開発はそのほとんどを日本で行っている。
「コントローラーLSIなどのハードウェアもファームウェアの開発も東京ラボラトリーで行っています。ファームウェアとハードウェアの部隊が同じ場所で開発しているので、ここはハードウェアでこっちはソフトウェアでと密に連携しながら最適な開発が行えます」(佐々木氏)
日本はもともとマイクロコードやファームウェアの開発が得意、世界からもその品質の高さは評価されているのだとか。
そんなIBMのテープ製品には、「LTO」と「エンタープライズテープ(3592)」という2つのラインナップがある。前者は標準化された汎用テープカートリッジを利用するテープ装置で、後者はzEnterpriseなどで主に利用される。この2つの製品ラインナップ間では、互いにフィードバックをしながら品質、性能の高い製品を作っている。LTOは主に大容量をいかに実現するかで、エンタープライズはエンタープライズ用途で必要とされる安全性などの高付加価値を追求している。
開発スパンがかなり長いのも、テープ装置の特長だ。なので、かなり長期的な視野をもって製品戦略を立てなければならない。
「2002年に1テラバイト容量のテープ装置のデモを行い、そこから6年かかって製品化しました。2006年には8テラバイトのデモを行い、これが間もなく製品化されます。直近では容量154テラバイトのデモを行っています。これも10年以内の製品化を見越し開発しています」(佐々木氏)
テープ・ストレージの開発は、IBMだけではなかなか技術革新が起こせない。なので磁気テープは富士フイルムと協業を行っている。両社の協業で開発した低コストの「リニア方式塗布型磁気テープ」で、1平方インチあたり859億ビットの面記録密度を達成したと2014年5月に発表している。これが、1つのテープカートリッジで154テラバイトの非圧縮データの格納が可能になるテープ装置になるということなのだ。