わずか5年の間に急成長したOpenStack
近年ではすっかりクラウドコンピューティングが定着し、大規模事業者によるパブリッククラウドから企業や組織で構築するプライベートクラウドまで幅広く展開されている。クラウドコンピューティングが普及するなか生まれたのがこのOpenStackである。
IaaS型でクラウド基盤を構築するためのオープンソースソフトウェアだ。いわばAWS(Amazon Web Service)のEC2やS3といったクラウドインフラを構築するためのオープンソースソフトウェアと考えればイメージしやすいかもしれない。2010年10月にアメリカのRackSpace社が持つストレージ基盤「Swift」とNASAが開発していたVM管理の「Nova」をオープンソース化した最初のバージョンが公開された。追って2012年にOpenStackの開発を支えるOpenStack財団が設立された。
わずか5年の間にOpenStackは急速に成長した。当然ながら5年前はまだ誰もOpenStackは使っていなかったのである。それが今や開発者は2500人へと広がり、昨年パリで開催されたOpenStack Summitでは約5000人が参加するほどOpenStackコミュニティの輪は広がった。
OpenStackは始まりからグローバル展開を意識していた。最初のイベント参加者は75人と少なかったものの、日本(NTTデータ)ほか世界各地から参加があり、最初からグローバルだったそうだ。なお2010年10月の最初の公式バージョン公開とほぼ同時に日本OpenStackユーザ会(JOSUG)も設立された(クラウド基盤ソフトウェアを包括的に扱うオープンクラウドキャンパスの分会という形となっている)。
Collier氏はクラウドが普及したいま、新興企業が大企業と並んで競う時代になっていると指摘した。その鍵となるのがソフトウェアだという。近年よく耳にするIT用語で「ソフトウェア・デファインド」で始まる用語がある。これに続くのが「ネットワーク(SDN)」や「ストレージ(SDS)」。Collier氏はここに「エコノミー」をあてはめ、「ソフトウェアがあらゆる全てのビジネス基盤になる」との見解を示した。
いまではOpenStackの導入事例はCERN(欧州原子核研究機構)、テレビ会議のCisco WebEx、決済サービスのPayPal、アメリカの金融機関ウェルズ・ファーゴ、電気自動車のテスラモーターズ、日本ではGREEやお名前.comなどに広がっている。特にCERNでは千台以上のVMを稼働させるほどの大規模なものだ。なお導入事例が急進しているのはプライベートクラウドの領域。2014年はプライベートクラウドでの導入件数が倍増したという。