
「多くのCEOが生き残りしか考えていない」と語るのは、Oracle CloudWorld Tokyoの2日目の基調講演を行ったOracle社のCEO マーク・ハード氏だ。CEOの多くは、10年後とかではなく自分が抱えている事業が直近でどのように収益を上げられるのか、ビジネスがどう成長するのかだけを考えている。そんなCEOの寿命は平均して5年足らず。CEOの寿命が短いのは、世の中の変化が激しいから。それに追随し企業が収益を上げ続けるのが難しいからだ。
クラウドの本当のメリットは、コストが下がることではなくイノベーションのスピードが上がること
今、激しい変化を牽引しているのは消費者だ。世の中のIT投資を見ても企業と消費者でほぼ半々。企業側の投資の82%は保守で現状維持のために使われ、イノベーションは18%に過ぎない。消費者がITをイノベーションに利用しているのとは対象的だ。
「今や、パワーは消費者に移っています」(ハード氏)

消費者はソーシャルネットワークですぐにつぶやく。特にサービスが悪かったときにつぶやく。なので、何か知りたければ口コミですぐに分かる。レストランやホテルなどは、そういった口コミで評価されサービスが悪ければ人は来ないし、良ければ戻ってくる。
一方でハード氏が問題にしたのが、世界の人口動態が変わること。これにより、新しい時代の働き方が生まれると。深刻なのが労働人口が減っていること。「特に日本の労働力には、大きな課題があります」とハード氏。総人口が減るのも問題だがそれで生産性が下がるのがもっと問題だ。日本では15%の人口減に対し、労働人口は20%も減る。少なくなった労働人口で足りない分の生産性を向上させなければならない。とはいえ人口動態は固定的なので、若年層が少ないからと増やすことはできない。
「定年退職の年齢もこれで変わってきます。65歳ではなく73歳にしなければならない。そうなると企業には21歳から73歳までの人が働くことに。そこには50年間の世代ギャップがあります」(ハード氏)
そうなれば、会社の中で使うツールも複数の世代が利用しやすいものでなければならない。消費者向けも年代によって購買の仕方は違うので、それに最適化したものが必要だ。
「若い世代はコラボレーションで仕事をします。電子メールはすでに旧式です。若い世代はメールではなくメッセージで送ってきます。それもグループメッセージです。1対1の電子メールは使わないのです」(ハード氏)
会話的にメッセージやアイデアを送る。労働人口の半分がそういった人たちになる。当然、顧客もそうなる。この変化に対応するには、旧いITインフラでは不可能だとハード氏。旧いアプリケーションの時代には、インターネットもなければソーシャルネットワークもなかったからだ。そんな旧いアプリケーションの保守のために、80%ものIT予算を使っている。これでは、世界の変化について行けない。
「イノベーションのための支出ができない。顧客や社員のダイナミズムについて行けない。クラウドの現実を受け入れることが必要です」とハード氏。自分で何もかもやろうとするのではなく、誰か専門家にやってもらう。そうすることでイノベーションのスピードが違ってくる。そのためのクラウドサービスを提供するのがOracleの使命だと言う。そして、クラウドの本当のメリットは、コストが下がることではなくイノベーションのスピードが上がることだ。
これは未来の話ではなく現実のこと。経済的な要因からもこの変化を受け入れずにはいられない。Oracleとしては、そのための最高の「近代的アプリケーション」を提供していくという。
「そのために日本でもデータセンターを立ち上げます。それが日本へのコミットメントであり、これから先も投資を続けることを約束します」(ハード氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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