MapRのビジネスは、なかなか良好だ。売り上げは毎年2倍ほどのペースで増えており、ライセンスビジネスは年間でおよそ140%の成長。ライセンスビジネスの割合が90%を超え、顧客の多くがライセンス契約を更新する。ライセンスビジネスの粗利率も90%に達する。
「日本でもすでに多くのユーザーを抱えています。日本企業は新しい技術を採用してくれるので、そういった面からも日本は重要な市場です」(シュローダー氏)
2014年10月にマップアール・テクノロジーズ 日本代表に就任した安田 稔氏によれば、日本法人設立からの2年あまりで、ぐるなび、電通レイザーフィッシュ、Qubitalデータサイエンス、リクルートテクノロジーズなどを始めとする30社を越える企業が採用。日本法人の規模はまだ10人に満たないが、ノーチラス、新日鐵住金ソリューションズ、ユニシス、CTC、NTTコムウェアなどの多くのSI企業がパートナーとしてMapRの製品を扱うことになっている。MapRでは日本の体制を早々に20名程度に増やす予定を立てている。
Hadoopのディストリビューションだけじゃない
「従来型のHadoopに比べるとMapRの適用範囲は裾野が広いです」とシュローダー氏は言う。なので対象となるマーケットも広がる。裾野の広さはユーザーアプリケーションにも影響を及ぼし、顧客にもメリットをもたらす。なので、当初はトライアルや小規模な科学プロジェクトなどで使われてきたHadoopが、今は大規模な企業の基幹系でも使われ、さまざまなビジネス・アプリケーションのプラットフォームにも利用されている。
「もともとバッチ処理系が得意だったHadoopを、MapRでは予測型分析ができるよう拡張しています。MapRが目指すのはよりリアルタイムに分析して結果がアクションに結びつくようにすることです。他社との違いはHadoopの上にさまざまな拡張をするのではなく、MapRのプラットフォーム上にHadoopのディストリビューションを乗せる形になっていることです。これこそがMapRの強みです」(シュローダー氏)このリアルタイム処理に強いところがMapRの特長にもなっている。
これは、MapRのプラットフォーム上でHadoopに関連する各種オープンソースソフトウェアが動く形だ。これにより、オープンソースのHadoopにはない高可用性や、ポイント・オブ・リカバリーなどエンタープライズに求められる機能をHadoopのエコシステムに提供している。処理スピードは2倍から7倍で、この高速性によりTCOも下げられる。性能が高くなれば、それだけ分散させるサーバー数を減らせる。結果的に運用管理負荷の削減でも優位に立てるのだ。
MapRでは2014年には、オペレーショナル・リアルタイムに対応するNoSQLエンジンの提供を開始した。そして今回新たに提供するのが「Apache Drill」だ。今回発表するApache Drill 1.0は、さまざまなデータソースに対してSQLのアクセスを提供するもの。
Apache Drill 1.0は、ANSIベースのSQLをサポートする。なので、既存のアプリケーションをHadoop用に書き換えずに利用可能だ。仕組みとしては各データソースのデータ構造を一元化してメタデータの形でDrill内に持つようなものではない。データソースとなる各アプリケーションからは、加工などせずに独自の形のままデータをパブリッシュする。そのため、データを利用できるようになるまでの準備の時間がほとんど必要ない。またアプリケーション側で後からデータ構造の変更などがあっても、Drillでは容易に対応できる。
構造化されていないデータを扱うのにDrillは適している。つまり、ビッグデータ活用のインタラクティブ性が高くなるということだ。
プロダクトマーケティング ディレクターの三原 茂氏は、Apache Drillはデータからビジネスへとつなぐところを迅速化するのに重要なツールだと語る
「今はITシステムのアジリティが大事です。そのアジリティを提供するのがDrillです。Drillの最大の特長は、データ構造のスキーマを定義する必要がないこと。スキーマを定義しないと使えないとなれば情報システム部門などにその技術作業を依頼することになり、現場でデータを分析したいと思ってもすぐには実現できません。Drillは、ソースとなる構造化データから非構造化データまでを、1つのSQLエンジンで探査できます。これで、データを入れてから結果が出るまでの時間をぎゅっと短くできます。結果的にはIT部門の負担も減ることになります」(三原氏)