ERPは「既製品」であるという意識が重要
引き続き、第2部では「失敗しないためのERP導入プロジェクトの秘訣~国内外のERPシステム導入における成功・失敗~」と題して、株式会社日立システムズの田中啓喜氏による講演が行われた。
50年以上にわたるSIとしての実績から、大企業から中堅・中小企業の製造業からサービス業まで、さまざまなお客さまのERP導入を支援してきた日立システムズ。田中氏は、国内、海外問わず多くの企業の基幹システムの導入プロジェクトに従事してきた。現在は、西日本地区を中心に活動、SAPを中心に企業の経営基盤の構築に携わり、コンサルテーションからプロジェクト責任者として活躍している。
RFPの着眼点としては、以下の4つがあるという。
- プロジェクト目的と課題 / 顧客体制:経営層の関与、メンバー関与など
- ERPシステムへの理解(啓発など)
- 現行システム踏襲 or 業務・システム改善
- 年商規模、業種、データ量
「こうした着眼点の結果、パッケージを意識しないで、目標、ゴール、共有課題、ERPを知る、意識向上も含めた業務改善の事前フェーズを提案など、RFP通りの提案をしないケースもあります」(田中氏)。
1998年から積み重ねてきた経験から田中氏が挙げる『当たり前だけどやはり』重要なポイントは「トップダウンによるプロジェクト推進」「アドオン開発の削減」「ユーザ部門の参画」「マスタ整備」だ。トップダウンによるプロジェクト推進は、先に細川氏が述べた「経営方針からプロジェクトの目的を明確化する」ことにも通じるものがある。
また、これ以外の留意点として、準備フェーズにおける相互の理解、業務、製品知識の共有や、 顧客体制(専任 or 非専任/キーマン/参加度合など)、コミュニケーションプラン(キックオフ会議、ステコミ、定例会、レビューなど) 、 経験値(特に業界、テンプレート)、早期の機能確認などがあるという。
いずれにせよ、早め早めの対応を意識すること、そしてベンダとユーザが本音でコミュニケーションをとることが大事なことには変わりない。
田中氏は「ERPシステムは『既製品』であることの意識が重要。『ベンダ任せ』でなく『ユーザ』が作り上げるシステムである」としてセッションを閉じた。