エンタープライズ2.0は時代が求める必然
すでに述べたように、現場部門によるボトムアップのアプローチだけでは、継続的な人的、物的、制度的支援が得られずにお蔵入りしてしまう危険性が高くなります。ましてや、企業全体を動かしてワークスタイルを変革することなどできません。
そのような状況で悩む方にとって最適なパートナー候補がいます。それは、これまで運用してきたメールやグループウェア基盤の老朽化で悩むインフラチームの方々です。形のないソフトウェアに「老朽化」という表現を使用しましたが、事実、5年以上利用している環境では、動かしているハードウェアが物理的に壊れたり、リース切れになったりしますし、さらにソフトウェアの保守サービスが終了してしまうということが起こってきています。もしそうであればソフトウェアをバージョンアップすればよいではないか、という話もありますが、提供されるサービスが大きく変わるわけではないため、そのためのライセンスや工数にかかるコストを正当化できず、身動きがとれなくなってしまっているのです。
そのような状況の中、Web2.0的な目新しさは、何度もバージョンアップ提案をしながら費用対効果の壁を乗り越えられずにいた彼らにとって、希望の光となっています。
ぶちあたる壁が高いのは当然で、このような全社情報共有基盤システム更改プロジェクトを1,000人を超えるような大企業で行うと、ハードウェアやシステム構築コストを含め、数億円かかるプロジェクトになる可能性があります。しかし、投資判断を行うトップも、システム更改の必然性を理解していないわけではなく、いまやらなければならないその理由を求めているだけなのです。社内だけでなく世の中でもホットになっているWeb2.0への取り組みは、競合が先に取り組んで事業上の成果をあげることを恐れ、重い腰を上げるきっかけとなるのです。
ビジョンや業務面でのあるべき姿を現場部門が描き、システムとしての堅牢性や可用性をインフラチームが実現できれば、非常に強力なタッグになります。今、エンタープライズ2.0という概念に期待と注目が集まっている背景には、このようにいくつかの状況が重なった好機にある企業が多いという事情があります。
成功の鍵はツンデレにあり
さて、このエンタープライズ2.0の取り組みを実践する上で重視すべきポイントは、「ツンデレ」というキーワードに含まれています。「ツンデレとは?」という方は、定義の詳細を語ることはビジネス記事として適切でないと思いますので、お手数ですが各自で検索してみてください。ここでは既知のこととして話を進めます。
字面の通り「ツンデレ=ツン+デレ」なのですが、まず基本は「ツン」であるというバランス感覚が重要です。エンタープライズ2.0の概念には、先ほどの説明にある全社情報基盤の堅苦しく「ツンツン」したやや小難しい話と、Web2.0的なやわらかめの「デレデレ」した話が混在していますが、企業内の業務も組織も、ワークスタイルもその構成要素のほとんどが旧態依然とした1.0的世界観のままであるため、それを支える企業内のシステムも基本はツンツンしていてしかるべきです。残念ながら世の中はメディアが騒ぐほどには2.0化していないのが実情です。
もう一つ、ツンデレの概念から得られる示唆として、メリハリの重要さがあげられます。ツンツンとデレデレのギャップの大きさがツンデレの萌えの源泉とされています。それぞれの状態でのメリハリがはっきりしていることが重要で、どちらともつかない態度はツンデレキャラとしての魅力を弱めてしまいます。このメタファになぞらえると、ツンツンの面では権限管理やセキュリティ、スケーラビリティの確保など押さえるべき点をはずさずに、デレデレの面ではエッジの効いたオモシロイ要素を抽出して組み合わせることがサービスの魅力度を向上する鍵になります。
実際のビジネス環境では、業務や経営課題に根ざした基本機能がしっかりしていて、使っていくとややおもしろみのある気の利いた機能がついクセになる、というあたりがバランスのとれた落としどころでしょう。例えば、「全社で使えるブログ」ではなく「ブログの使いやすさを抽出して組み込んだ全社情報基盤」が目指すべき方向性といえます。バランスとメリハリが重要です。