2001年の調査開始から16回目を数える今回の調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向、重視するIT戦略などに加えて、全110項目に及ぶ製品・サービス分野の投資意欲、海外進出企業のITガバナンスの実情などについて調査を行った。国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者約6,000人に対して、Web経由で回答を呼びかけ、前年調査を上回る2,685件の有効回答を得たという。
同社の発表によると、2016年度のIT予算は、前年度から「増額」とした企業の割合が28.5%と、前年調査における2015年度の値(21.3%)を大きく上回り、2013年度以来、3年振りに4分の1を超える水準になった。一方、「減額」とした企業の割合は9.7%と前年調査の結果(8.8%)から若干上昇したものの、一桁台にとどまったという。
また、2017年度に向けた見通しでは、「増額予定」が「減額予定」を大きく上回る傾向には変化がないものの、大幅な予算の増加(20%以上の増加)見込む企業の割合が減少しているほか、減額を見込む企業の割合が二桁台に達するなど、やや弱含みの様相となっているという。
なお、このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資増減指数」で見ると、2016年度の実績値は「2.10」となり、前年調査時の予想値(1.42)を大きく上回って2013年度 と同じ値となった。2017年度の予想値は、2016年度の実績値を下回る「1.73」で、これは予想値としては2009年度以降では最高の水準であり、ITへの積極的な投資意欲は持続すると見られるとしている。
IT予算に占める情報セキュリティ対策費用が上昇
IT予算に占める「情報セキュリティ対策」「災害対策」「内部統制」といったリスク対策費用の割合は引き続き上昇しているという。
なかでも情報セキュリティ対策費用は、過去最高を記録した前年調査からさらに1ポイント以上の上昇となる「16.4%」を記録。災害対策費用、IT内部統制向け費用の割合も、前年調査結果を上回っており、IT予算の増額分の一部がリスク対策に振り向けられている現象が浮き彫りとなったとしている。
重視するIT戦略キーワード、「イノベーション」「ワークスタイル革新」の順位が上昇
次年度に最も重視するIT戦略キーワードでは、上位6項目の順位は前年調査から変動がなかったものの、「ビジネス・イノベーションの創出」がトップ10に食い込んだほか、「従業員のワークスタイル革新」が大きく順位を上げた。
グローバルITガバナンスは「海外主導型」へシフト
全有効回答のうち、すでに海外に事業拠点を設置済みの企業は32.3%(858社)、準備中ないし検討中の企業を含めれば56.6%(1,503社)と半数を超えており、事業のグローバル化は着実に進展しているという。今回の調査で、今後に向けて、そうした海外進出企業のITガバナンスの主導権が国内(本社)から海外へ移転する可能性が示唆されたとしている。
また、グローバルで利用されるITシステムの標準化のアプローチについては、現在の取り組みとしては「日本の要求水準を全世界に展開する」との回答が最多だったが、将来のあるべき姿については、「海外で標準とされる環境を日本を含めた全世界に展開する」との回答が大きく値を伸ばして最多となった。
「IoT」「AI/機械学習」への新規投資需要が拡大
製品/サービスの投資意欲を確認するため、全110項目について現在の導入状況と今後の投資意欲を調査した結果、モバイルやクラウド、データ・マネジメント、各種セキュリティ・ツールなどに加えて、「IoT/M2M」「AI/機械学習」の2項目が、幅広い業種において注目度を高めていることが明らかになった。
現在未導入の企業が、2017年度に新たに投資対象とする可能性を示す「新規導入可能性指数」を算出して業種別に分析したところ、インフラ/デバイス分野では「IoT/M2M」が、OS/ミドルウェア分野では「AI/機械学習」が、いずれも複数の業種で最も高い指数を獲得したとしている。
本調査結果の全結果および分析は、『国内IT投資動向調査報告書2017』として同社の Webサイトを通じて先行予約販売を開始している。同レポートの発刊は11月中旬 を予定している。