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AI、IoT、プロファイリングに対応した法律実務
ー個人情報保護法とプライバシー権の本当の関係―口が裂けても「データの所有権」と言うな
ー恥ずかしくない利用規約のために―あなたがドラフトした利用規約は会社の品位を害している
ーAI、IoT、プロファイリング―気付いたらある未来
炎上とプライバシー
「炎上」という言葉を聞いて、皆さんはどのようなものを想像するだろうか。炎上とは、一般的には「一つの物事に対して、批判や非難が一時的に極端に集中すること」などと説明できるかも知れない。いわゆるネット炎上についてはいくつかの定義がなされており、例えば、「ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到する現象 」のようなものもある。(出典:山口真一「ネット炎上の実態と政策的対応の考察ー実証分析から見る社会的影響と名誉毀損罪・制限的本人確認制度・インターネットリテラシー教育の在り方ー」)
最近では、元テレビ局のアナウンサーが「人工透析患者は自業自得なのだから、人工透析に係る費用を自己負担しろ」という趣旨の意見を自身のブログで公開し炎上した。これに対して、多くの批判がこの意見に寄せられ、結果として出演していたテレビ番組からも降板することになった。
プライバシーの問題についても、炎上という側面で整理されることがある。例えば、あるサービスが開始される際に、そのサービスに批判や避難が集中し、そのサービスが開始できなくなったり、サービスの維持ができなくなるということがある。
NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が大阪ステーションシティで行おうとした映像センサーを用いた社会実験では、実験開始の案内が出されたのちに、市民や専門家から疑問の声が上がった。映像データの安全な活用の技術的な理解が市民にとって困難であった点や、そもそも映像データの取得の対象(被写体)からセンサーが必ずしも認識されない状況においてデータを取得することの是非が論点となった。それによって、NICTは当初の予定よりも開始時期を半年以上遅らせ、実験規模を縮小することになった。
あるいは、有限会社マニュスクリプトが公開していた、女性が彼氏のスマートフォン情報を取得することを目的とした「カレログ」と呼ばれるアプリでは、やはり市民や専門家から疑問の声が上がった。彼氏が把握してないうちに、彼氏の位置情報や通話記録、アプリの利用状況などを取得することに対して、多くの懸念が投げかけられた。結局、カレログは、公開から約一年でサービスを終えた。