シリコンバレーで話題のリテールストア「b8ta」とは?
最初に「b8ta」について聞いたのは、シリコンバレーのスタートアップ企業でウェアラブル端末の製造・販売をし、また全米No1のクラウドファンディングである「Kickstarter」で資金を調達した企業の社長からでした。
正式リリース前の「β(ベータ)」をもじって「b8ta」とするなどネーミングにセンスを感じましたが、そのほかに(1)KickstarterやIndiegogo、もしくはベンチャーキャピタルが出資するメーカーの最もクールなガジェット(IT製品)が集まること、(2)リテールストアだが、来店者の行動をカメラで把握し、データとして企業のマーケティングに役立てるマーケティング支援費用が収益モデルとなる新しい小売りのモデル、という点から非常に興味を持ちました。
「b8ta」は、後にGoogleに買収された空調・温度系IoTの先駆けである「Nest」出身のVibhu Norbyが2015年にサンフランシスコで設立し、シリコンバレーの中心地の1つであるパロアルト、IT企業やスタートアップ企業がシフトしているといわれるワシントン州シアトルやテキサス州オースティン、ロスアンゼルスのサンタモニカビーチに4店舗あります(2017年7月現在)。
そして近々、サンフランシスコ市内にも出店を予定しているようです。また全米に1600店展開する家電・住宅関連の小売り大手である「Lowe's」とも提携し、店内でSmartSpot powered by B8taを展開するなど、小売店として着実に店舗数を増やし、軌道にのってきている印象です。
そしてその一番の売りは、スタートアップ企業の作るクリエイティブ、かつ革新的なIT製品などが常時80以上の並べられており、訪問者は市場にまだない、極めて斬新な商品を実際に手に取って、欲しければその場でオーダーできます。
一方で、展示・販売する側にも大きなメリットがあります。それは、その場で販売できることのメリット以上に、自社の開発した製品に対するマーケティング・調査、というメリットがあることです。
以下の「販売したい方向け」ページを見ると、メーカー側は2017年7月現在、月間2万5000人の来場者、そして300万回の露出、その中から何人が手に取り、どれくらい商品前に滞在したか、などのマーケティングデータを入手することができる、と記載があります。また店共通のプロモーションビデオ等も作成してくれるなど、マーケティング面のサポートも期待できるようです。
実際のサービス料金に関する記載はありませんが、スタートアップ企業向け、かつ80商品、つまり80社のスポンサー、商品が魅力的であればお店側も集客メリットがあることを考えると、気軽に試せる価格帯設計、つまり月1000ドル~2000ドル(10万円~20万円ぐらい)と想像します。
筆者が1年前に訪問した際は、VR(仮想現実)、ウェアラブル端末(メガネや健康状態の測定機器)などのIoT機器が多かった印象がありましたが、今回はドローンの進化版、またスマホアプリと鍵などのセキュリティを併せたスマートハウス系IoT商品、また子供用教育系が多かったように思えます。
このようにシリコンバレーというスタートアップ企業が牽引するマーケットの中で何が今トレンドか、そして実際にどういう製品になるのか。そしてスタートアップ企業として大手ができない差別化は何か?などを実際に感じることができます。
日本で言うと秋葉原にこのようなお店があれば、IT製品好きやエンジニアの人たちが集まるイメージがあり、またビジネスモデル的にもマーケティング調査と販売の2つの収益モデルに支えられる小売店ということで注目も集めるのではないでしょうか。
以下、2017年7月に訪問時点での展示商品の一部です。ぜひご参考になさってください。