EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

真のリアルタイムOLAPとは

edited by DB Online   2017/08/09 06:00

なぜSAP社はカラムストアにこだわるのか?

  「カラムストアによるOLTP」という仕組みに、SAP社はなぜこだわるのでしょうか?
  ERPベンダーとしてのSAP社には「ワンファクト・ワンプレース・リアルタイム」という基本理念があります。
  『SAP 会社を、社会を、世界を変えるシンプル・イノベーター』というSAP社について書かれた本があります。その中には以下のような記述があります。

企業活動がコンピュータ内に再現されることで実現する「理想の状態」を表現するキーワードがある。それが「ワンファクト・ワンプレース(One Fact, One Place)」である。「事実はひとつだけであり、その事実が1ヶ所に記録されている」状態を指す。これは「SAP ERP」を象徴するキーワードであり、20年以上も前から使われ続けている。(中略)また「ワンファクト」を担保するうえで「ワンプレース」と並んでもうひとつ欠かせないポイントが「リアルタイム」である。いくら「事実はひとつだけ、1ヶ所に記録する」という状態を作り上げたとしても発生した事実を記録するタイミングに時差があれば、その間に事実が変わってしまうことがあるからだ。(中略)すべての活動をデータの発生箇所でリアルタイムに記録しない限り、「ワンファクト」を実現することはできない。SAP ERPがその繁明期から「ワンファクト・ワンプレース・リアルタイム」にこだわっている理由はそこにある。==(P.32~34)==
 

これをデータストアの視点で考えると、ローストアで格納されたデータを変換して「最終的にカラムストアで保持する」のではなく、最初からカラムストアに格納すれば自動的に「ワンファクト・ワンプレース・リアルタイム」が実現できるのだという考え方がHANA開発のベースにあったと考えられます。

ハッソー・プラットナーのアプローチ

  SAP社共同創立者の一人であるハッソー・プラットナーはCEO職を退いた後、「ハッソー・プラットナー・インスティテュート:HPI」において、研究者としての活動を行っていました。
 彼は「ハードウェアイノベーションにより、応答時間ゼロのデータベースが実現できればどのような世界になるだろうか」というテーマでの研究を続けていましたが、その結果インメモリデータベースという着想を得ることとなります。つまり、すべてのデータをメモリ上に格納することで、低速なディスクによるI/Oボトルネックを解決し、応答時間を限りなくゼロに近づけることができるのではないかと考えたのです。

 さらにハッソーと彼のチームは、インメモリ化でディスク・ボトルネックの壁を打ち破ることができれば、業務系DBと情報系DBのデータストアを統合し「ワンファクト・ワンプレース」が実現できるのではないかという考えに至ります。
  ここで、インメモリ・カラムストア型データベースとしてのHANAの基本的なコンセプトが形成されました。
  この大胆な発想は当時のSAP社経営幹部から「インメモリではデータの永続性が担保できない」と猛反対されましたが、ハッソーは「永続化の問題は必ず解決策がある。だから、インメモリの研究を進めるべきだ。」と彼ら経営幹部を説得しました。
  ハッソーの新しいアーキテクチャ(HAasso's New Architecture)はその頭文字を取って「HANA」と呼ばれ(「High-performance ANAlytic platform」が由来であるとの説もあります)、やがてSAP HANAという革新的データベースに結実することとなりました。

 

***

  次回は、次回は、HANAの「OLTPにも対応できるカラムストアの仕組み」について解説したいと思います。



著者プロフィール

  • 三原健一(ミハラケンイチ)

     ベンチュリーコンサルティング株式会社 技術顧問  現在、大手SIerの性能問題対応チームに従事。主にOracleデータベースの性能問題解決や負荷テストの計画・実施・分析・評価等を担当。前職のインサイトテクノロジーではメルマガやブログの執筆に関わる。  ・ブログ「サイクル&オラクル」

バックナンバー

連載:Oracle技術者から見た、SAP HANA
All contents copyright © 2007-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5