1962年に創業しているTDCソフトは、老舗SIerとしての安定感をみせている企業。その一方で、従業員エンゲージメントを意識したオフィス空間が設けられていたり、柔軟な働き方ができたりするイメージを抱く方は少ないでしょう。少子高齢化社会を迎え、ますます専門人材の採用が難しくなっていく中、SIer特有のワークスタイルに係わる課題も解消しなくてはいけません。
そこで同社は中期経営計画に基づき、「Smart Work構想」として組織風土の変革、働き方改革に乗り出しています。それを体現するための一の矢が新オフィスへの本社移転。「Re:Place」をコンセプトとして2023年10月に九段会館テラスへと移っています。同社によると、
歴史、伝統、文化を引き継ぎつつ新たな価値を創造し、社員一人一人が自身にとって最も良い場所と感じる場所にアップデートし続けていくという意味が込められています。
とコンセプトについて紹介されており、まさに登録有形文化財建造物の旧九段会館を擁している新オフィスの在り方と呼応するが如し。実際には、次世代を担うことになる若手を中心としたワーキンググループが「Re:Place」を策定し、偶然にも九段会館テラスが移転候補先として挙がったとのこと。
今回の新オフィスは、4階と5階の2フロアで構成されており、4階は経営管理部門などのバックオフィスを中心とした執務室やセミナールーム、5階には従業員にとってメインとなるコラボレーションエリアが設けられています。
4階のメインロビーは来訪者を招き入れるための設えとしてホテルライクな空間が広がっており、北の丸公園のお堀と日本武道館を望めます。執務室エリアやセミナールームからも同様の景色を眺めることができ、全体的に落ち着きのある雰囲気で統一されていました。
そして、一番のこだわりが垣間見えるのは5階にあるプレゼンテーションエリア。ここを中心としてフリーアドレス席が設けられています。
SIerならではの課題の1つが常駐先社員における帰属意識の低さ。それを解消するためにフロアの中心にあえて研修などを行えるプレゼンテーションエリアを設けたといいます。これまで研修の際に帰社しても別々のフロアに散らばってしまい、本社で勤務している社員も気づけずにコミュニケーションが生まれなかったそう。だからこそ全面ガラス戸のシースルーの意匠が採用され、誰がいるのか一目瞭然になっています。実際に訪問した際にも研修が行われていました。
また、同フロアには「TDC Hub」というイベントスペースも設けられており、一度に30人程を収容できる造りとなっています。福利厚生の一環として、おつまみや飲み物を300円で購入することができるため、社内でのイベントなどに利用されるそうです。
他にも収録・配信スタジオが設けられていたり、ファミレス席や個室ブースなど、用途にあわせたゾーニングがなされていたりと、誰もが使いやすいような工夫が各所に見受けられました。
なお、オフィスを見渡してみるとスーツ姿の社員は少なく、今回の移転にあわせて私服勤務も採用されているとのことです。
今回の新オフィスへの移転にともない、これまで本社を置いていた新宿文化クイントビルは「TechnoGrowth Center Shinjuku」として新たな開発拠点に生まれ変わっていくそう。“変化し続ける”ことをコンセプトに掲げているTDCソフトによる、“次世代型”SI企業としての取り組みは始まったばかりです。