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なるほど! AIの使い方――在住外国人向け多言語チャットボット、サクラマスの陸上養殖

2018/09/03 06:00

 7月27日に開かれた日本オラクル主催のイベント「Innovation Summit Tokyo 2018」。全19セッションのうちの1つ「生活の中のAI - 東京都港区Chatbot、北海道漁業IoTに見るオラクルのAI活用」では、オラクルのAIが私たちの日々の生活や仕事をどのようにサポートしてくれるのかがわかる、2つの興味深い事例が紹介された。ネガティブな意見もあるが、AIはやはり便利で身近なツールとなるのではないだろうか。

日本のAI・IoTの普及を阻む3つの課題意識とは

 “AI”という言葉は広く知られるようになっているが、実際にどこに活用すれば私たちの生活や仕事を変えられるのか、という具体的なところまで、ちゃんと理解できていると胸を張れる人は、まだ少ないのではないだろうか。

 エンタープライズの顧客に対し、マーケティング・人材管理・コールセンター・財務会計・IT運用管理といった領域で、AI活用を支援している日本オラクル クラウドプラットフォーム戦略統括 七尾健太郎氏は、情報通信白書平成30年版「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査結果」(総務省)を引用し、AI・IoTに対する課題意識について世界各国と比べたときに、日本が突出している項目が3つあると説く。

日本オラクル株式会社 クラウドプラットフォーム戦略統括 七尾健太郎氏
日本オラクル株式会社 クラウドプラットフォーム戦略統括 七尾健太郎氏

 1つ目は「データ収集・整理が不十分」。AIを導入しようとしても、そもそもAIに入れるデータがなかったり、データが各組織に点在していて集めるのが大変だったり、と懸念している。

 2つ目は「AI・IoTの導入を先導する組織・人材の不足」。ここでいう人材とはシステムエンジニアというよりも、業務部門でAIを使いこなしてデータ分析ができるデータサイエンティストを指す。

 3つ目は「ネットワークに接続されたモノが第三者に乗っ取られるリスク」。個人情報や社外秘のデータがAIに蓄積されたときに、どうやって守ればいいのかわからないというセキュリティに対する不安感が見られる。

 しかし、こうした課題は、本当に乗り越えられないほど高い壁なのか。課題があるからといって、すぐにあきらめていいほどに、AIがもたらす価値は小さなものなのか――決して、そうではないはずだ。こうした壁を乗り越え、自治体が有益なサービスを提供しているのが、東京・港区役所の事例。地方の水産業者が生き残りを賭けて取り組んでいるのが、カタクラフーズの事例である。

東京・港区役所における外国人向けAIチャットボット

 約25万人(平成30年1月1日現在)の人口のうち、約2万人を外国人住民が占める東京都港区。駐日大使館の約半分が港区に所在し、多くの外資系企業も港区に本社を構えていることが、大きな要因となっている。

 そのため港区では、外国人住民に向けた情報発信に、非常に力を入れているようだ。8月初旬の猛暑日に港区役所のホームページを訪れると、日本語・英語・中国語・韓国語の4か国で書かれた熱中症の注意を呼びかける緊急情報が、まず目に飛び込んできた。スクロールしながら右に並ぶ広報・報道欄を見てみると、「多言語によるFM放送」というリンクが見つかる。リンク先は、FMラジオの広報番組「MINATO VOICE(ミナトヴォイス)」の案内で、曜日によって異なる言語で放送中とある。また、在住外国人向けのFacebookページ「Minato Information Board」では英語とともに、外国人にもわかりやすい“やさしい日本語”で記事が投稿されている。

 こうした努力の結果、3年に1度行っているアンケートでは、80%の在住外国人が「港区からの情報提供に満足している」と答えた。しかし、それでも区の職員は「なお不十分だ」と感じていたという。

 行政機関である区役所の窓口は、開庁時間が基本的に平日の日中に限られている。窓口に来られない場合、区からの情報提供はホームページに頼ることになるが、そのコミュニケーションは一方通行だ。たとえ情報を豊富に用意していたとしても、欲しい情報にたどり着けていない懸念もあった。

 そこで港区役所ではAIチャットボットに着目。在住外国人のスマートフォンでよく使われているFacebookメッセンジャーのアプリを活用して、時間を気にせず気軽に質疑応答が行える方法を探ることにした[1]

 Facebookメッセンジャー上で港区のAIチャットボット「グル〜にゃ」に質問すると、回答の選択肢をいくつか提示してくれる。利用前にはFacebookアカウント「グル〜にゃ」と友達になっておく。現在対応している言語は「英語」と「やさしい日本語」の2つだが、このAIチャットボットを構成するサービスの一つ「Oracle Service Cloud」は多言語に対応しているため、同じ仕組みのまま対応言語を増やすことも可能だという。

 最終的にはユーザーに対し、役に立ったか立たなかったかのフィードバックをしてもらうことで、AIチャットボットが自動的に学習を重ねていく仕組み。多くの教師データを用意しなくても、様々なパターンの質問に柔軟に対応してくれるほか、データサイエンティストがいなくても現場の担当者が管理画面からすぐに回答を修正することができる利点もある。

港区の外国人住民向けのAIチャットボット
港区の外国人住民向けのAIチャットボット
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 港区役所がOracle Cloudを採用した理由は、こうした「多言語対応できるプラットフォームであること」「教師データは不要で自動的に学習すること」「区職員がセルフメンテナンスできる登録の利便性」に加え、行政サービスであるからこそ強く求められる「高セキュリティ」が評価されたことにあると七尾氏は語る。

 「実証実験の段階で、家族や病気、税金に関する質問など、人には言えない相談が多く寄せられることがわかりました。そうした質問データとメッセンジャーのIDが紐づけられれば、外部の業者などに個人情報が漏れてしまう。だからこそ、Oracleの高いセキュリティが必要なのです」(七尾氏)

 「Oracle Database Cloud」には、上記の高セキュリティ機能に加えて、機械学習のアルゴリズムが内包されている。質問の内容や時間などのデータを分析することで、将来的にはさらなるサービスの改善に向けた提案ができるよう、さらなる貢献をしていきたいという。

[1]: 2018年8月23日現在、AIチャットボットの公開に必要なFacebookの承認を待っている状況とのこと。承認が下り次第、運用が開始されるとともに一般にも公開されて、Facebookメッセンジャー上で同チャットボットを見つけられるようになる。また、このサービスは港区の国際化・文化芸術担当Facebookページ「Minato Information Board」からメッセージを送ることで利用を始められる。


著者プロフィール

  • DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

    DB Online編集部 翔泳社 EnterpriseZine(EZ)が提供するデータベース/データテクノロジー専門メディア「DB Online」編集部です。皆様からの情報お待ちしています。 Twitter : https://twitter.com/db_online Fac...

  • 野本 纏花(ノモト マドカ)

    フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈...

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