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情シスもスピードアップが必要!大和ハウス工業が取り組む「情報システム部の構造改革」の中身とは?

  2015/08/19 06:00

プロジェクト管理理論”CCPM”の適用で工期を25%削減

 プロジェクトマネジメントの改革では、ITプロジェクトにおける待ち時間に注目した。たとえばユーザー部門の反応待ち、テストの人員確保待ち、テストマシンの到着待ちなどだが、その中には優先順位の誤りや準備不足など、マネジメントにより避けられるものがある。

 大和ハウス工業が採用したプロジェクト管理理論CCPMの3つのルールは、低WIP(進行中作業)の維持、バッファ付与、バッファ管理だ。

 加藤氏は、各タスクの見積時間にはバッファとして待ち時間が50%想定されており、CCPMに基づけばその半分は短縮可能と指摘した。つまり各タスクの安全余裕を集約すると、通常見積の75%の期間で計画を立てることにする。

出所:ガートナー アウトソーシング&ITマネジメントサミット2015
大和ハウス工業株式会社/加藤恭滋氏 講演資料より

 その管理を担うのがConcerto(コンチェルト)というツールだ。組織全体が一つの判断基準としてバッファを共有し、その消費率が高いほど優先順位が高いとして問題解決することを可能にしている。またフローを見える化し、投入と完了のモニタリングによりWIPをコントロールする。

 短工期の実現にはベンダーの協力が不可欠だ。ベンダーには、50%のウエイトタイムが入った、今まで通りの見積を上げてもらう。それに対し大和ハウス工業は、75%の工数・工期で準委任契約として発注する。ベンダーから見れば、「勝手に25%値引きされている」と思うかもしれない。

 加藤氏は「双方が合理的に考え、協力して工期を縮小しようという立ち位置であれば、75%というのはそれほど無理な数字ではないと思います」と語る。

 「75%より短くなっても75%は約束し、超過したら人件費の部分として追加契約で精算する。これがウィンウィンの形を一番取りやすいだろうということで、打ち出しているやり方です」(加藤氏)

 CCPMのルールとして、以下の3つがある。

  • フルキット(万全な準備)
  • 日々の正確な報告
  • 素早い問題解決

 加藤氏は「これだけは愚直にやっていかないと、それまでの取り組みは絵に描いた餅になります」と語る。大和ハウス工業ではCCPMの定着に向けてマニュアルを作り、ベンダーなどに組織をあげてコーチングしている。

 もう一つのポイントとして、保守開発のスピードアップのためにプロジェクトを規模により分類し、それぞれに応じたプロセスを定義する必要があると考えている。

 またIT投資効果を確認するため、投資効果を事前チェックする「IT投資効果確認書」と事後チェックをする「IT投資効果実績報告書」を作成している。

 妥当性を確認し、目的を達成していなければ、もう一度プロジェクトを回す。場合によっては、プロジェクトを終えると決断することもある。

 個人の能力アップでは「能力開発チャート」を作り、情報システム部のメンバーそれぞれが能力を自己評価している。具体的な項目は以下の6つ。

  • プロジェクトマネジメント/ビジネスアナリシス
  • 分析手法と問題解決
  • 人間関係
  • 行動特性
  • ビジネスの知識
  • ビジネスコミュニケーション

 上司の評価を重ねて、本人と上司の双方が能力アップの指針として活用している。

 そのほかPositive Skill-Up Seminarという自主的社内勉強会を実施しているという。業務時間外の自主参加ではあるが、上司は部下がどの講座に参加するかを把握し、指導に活かしている。この結果、能力チャートの評価が1.1ポイント上がっている。「評価を見える化したことで、次のステージに上がる動機付けになっています」(加藤氏)

 2012年10月から構造改革に取り組んだ結果、以前の2011年に完了したプロジェクトの数は342だったが、2012年度は505、13年度は800、14年度は898と、大幅に向上しているという。

 工期の関係では2011年度に51%が見積工期オーバーしたのに対し、2014年度のスモールプロジェクトのオーバーはゼロ。半数以上のプロジェクトが25%以上、期間短縮できた。

 工期の短縮は、投入するリソースを増やすことでも達成できるが、コストを見ると2013年度は54%、2014年度は67%のプロジェクトで削減しており、削減額の総予算に対する割合も0.8%から5.6%と、いずれも向上している。

 以上のように構造改革は成果を上げているが、大和ハウス工業では次のような新たな課題も明らかになったという。

  • 生産性のジレンマ:プロジェクトの生産性は上がったが、開発すべきシステムを絞っているため、リソースが有効活用できていない。
     
  • 情報システム部の役割:工業化建築において、情報システムは不可欠な要素。にもかかわらず十分に認知されておらず、スムーズな業務のための協力が不足している。
     
  • 事業横断と一気通貫:情報システム部は、事業を横軸で見ることで全体最適を実現してきた。しかし事業部門と一体でIT支援をするためには事業系列で担当を配した方がよい。

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