コンテナ技術でモダンなクラウド環境をオンプレミスに設置
「IBM Cloud Private(クラウド・プライベート)」とは、「一言で言えばクラウドネイティブの能力をオンプレミスに設置するもの」(IBM 三澤氏)
Kubernetes、Cloud FoundryなどのDockerコンテナ技術により、最新のクラウド・ネイティブな環境を、プライベートクラウドやクラウド化できないアプリケーションのオンプレミス環境に構築できる。また、IBM Cloudだけでなく、AWSやMS Azureなど他社のパブリッククラウド環境のアプリケーション環境にも対応することが特色。最小構成の価格は、月額130,400 円(税込、4コア)、評価目的でのみ利用できる無償のコミュニティ・エディションも提供される。
「リフト&シフト」とクラウド移行の3段階
企業システムのクラウド移行に対する考え方として「リフト&シフト」という言葉がある。IBMは、この「リフト&シフト」をベースに3段階のコンセプトを提唱する。「新しく構築するもの」「変えたほうがよいもの」、「変えなくてよいもの」だ。このうち今回の製品のフォーカスは、「変えなくてよいもの」であるオンプレミスの環境に、モダンなクラウド技術を適用するということだ。
「ベンダーは安全性を保証はするものの、クラウド移行により不安定になることを危惧するお客様や、クラウドベンダーが特権IDを持つことへの懸念を持つ国や業種が存在するのも事実」(三澤氏)
こうした意識を持つユーザー企業に対応することも、IBMの責務であるという。既存資産をオンプレミスに残しつつ、特権IDや監査証跡、ログをユーザーだけがコントロールできるようにすることがIBMの解決であり、戦略だ。
また段階的な「リフト&シフト」型のクラウド移行にも、マイクロサービスやAPI活用によってクラウド・ネイティブ技術を適用させていくという。
なぜコンテナに注力するのか
今回の「IBM Cloud Private」のコアにあるのは、仮想サーバー上でプリケーションをパッケージングし運用するコンテナ技術、DockerコンテナとCloud Foundryの両方をサポートしていることが特長。IBMは、CNCFの設立団体である他、オープンソースのコンテナのコミュニティにコミットしてきたことからも知見を有する。とりわけコンテナアプリの配置とスケーリングを自動化できる、Kubernetesを、標準技術としてとらえているという。コンテナ技術によりクラウド開発が俊敏になり、他ベンダへの移行のポータビリティも確保できる。
「クラウドによってお客様がロックインされるという懸念に対しては、賛否両論あるが、ひとつのクラウドで構築したものが他に移行できないことは問題」だと言う三澤氏。「IBMとしては、できればIBMのクラウドだけで使っていただきたいが、そうは問屋が許さないので」とも言い、クラウドネイティブなシステムについては、AWSやMS Azureなどのプラットフォームに移行できることもつけ加えた。
クラウドへのリフトも自動化
オンプレミスのクラウドへの移行を支援するサービスとして、従来のIBMの開発・構築実績に基づく「ソリューションカタログ」も提供される。IBMのミドルウェア、ソフトウェアに加え、ユーザー企業の持ち込みのHELMパッケージもカタログコンテンツとして含まれる。
またマイクロサービス・アプリケーション開発に必要なツールを統合した機能や、CHEF、Terraformなどによりマルチクラウドにセルフサービスでデプロイする機能なども含まれる。さらに、IBM WebSphere LibertyやDb2、MQなどの、新バージョンも発表された。
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コミュニティ版:無償ダウンロード http://ibm.biz/IBMCloudPrivate
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製品版:仮想プロセッサ1台あたり 月32,600円〜、既存IBMソフトウェアライセンス持ち込み可、マルチ・クラウド構築自動化機能(Cloud Automation Manager)のみ利用の場合、仮想プロセッサコアあたり 月額7,426円