2016年はAI利用気運が高まったが、実際のビジネスへの適用は少数に留まった
IDCではコグニティブ/AIシステム市場を、自然言語処理と言語解析を使用して質問に応答し、機械学習をベースとしたリコメンデーションとディレクションを提供する技術として定義している。
この市場は、ハードウェア/ソフトウェア/サービスのテクノロジーによる分類と、ビジネスでの利用方法(ユースケース)に即した分類方法で分析している。この分類方法は、IDCの「Worldwide Semiannual Cognitive/Artificial Intelligence(AI) Systems Spending Guide」で主要なユースケースを抽出し、適用モデルを作成している。
上記のような市場分類による2016年の国内コグニティブ/AIシステム市場規模は、ユーザー支出額ベースで158億8,400万円になったと推定している。2016年は、企業によるAI利用気運の高まりが見られたが、効果の実証実験(Proof of Concept:POC)が多く、実際のビジネスへの適用は少数に留まった。またユースケースでは、専門職の分析/検索をサポートする「ナレッジワーカー向けデジタルアシスタンス」や、製造業での「品質管理」などの利用方法が多かったと推定している。
また、IDCでは2017年3月に、従業員100人以上の国内ユーザー企業500社を対象に「コグニティブ/AIシステムに対する意識調査」を行った。この結果、全体の57.4%でAIが自社ビジネスへ何等かの影響を及ぼすと感じており、特に従業員100人~249人の中小企業が関心を寄せていることが判明した。
IDCではこの結果は、企業における人材不足対策への期待およびAIによるビジネス競争力低下への脅威によると推定している。一方、既にAIシステムを全社/複数部門で利用しているユーザー企業は全体の9.6%に留まっており、普及には至っていない現状が判明した。
2018年以降は詐欺検出/分析、自動顧客サービスなどへのAI適用が進む
IDCでは、2017年の同市場は、2016年までのPOCから実ビジネスへの適用が多くなり、市場は急速に成長すると予測している。また2018年以降の同市場は、金融などでの詐欺検出/分析、全業種での自動顧客サービスなどへのAI適用が進み、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は73.6%で成長し、2021年には2,501億900万円の規模になると予測している。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング グループディレクターの眞鍋敬氏は「ベンダーおよびシステムインテグレーターは、来るべきコグニティブ/AIシステムのビジネス展開期に合わせて、AIの実ビジネス適用のためのコンサルティング、教師データの構築/作成支援サービスなどが必要」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内コグニティブ/AIシステム市場予測アップデート、2016年~2021年」と「2017年 国内コグニティブ/AIシステム市場 企業ユーザー調査」にその詳細が報告されている。 前者は、国内コグニティブ/AIシステム市場のテクノロジーセグメント別/ユースケース別市場規模実績と予測などを提供している。後者は、国内企業におけるコグニティブ/AIシステム、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)およびボットについての利用状況や将来計画などを、IDCが2017年3月に実施したユーザー調査の結果を基に分析している。