1. 市場概況:2017年度のIT市場規模は前年度比2.0%増と予測――投資対象はAIやIoTへ
国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2016年度が前年度比2.8%増の11兆8,800億円と推計した。今後は、2017年度が前年度比2.0%増の12兆1,170億円、2018年度は前年度比1.5%増の12兆3,000億円、2019年度は前年度比0.8%増の12兆4,000億円になると予測する。
市場を牽引してきた金融機関を中心とした大型の基幹システム等の更新・開発案件が2016年度にピークアウトしたため、国内民間企業のIT市場規模は拡大基調にあるものの、そのスピードは2017年度以降、緩やかになると予測する。2017年度以降のIT投資ではAIやIoTの分野が投資対象になっており、これらのテーマを中心とした案件が大手ITベンダーのシステムインテグレーションビジネスの堅調な推移につながっていく見込みである。
また、セキュリティの強化やワークスタイル変革に関する取り組みや、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けたシステム開発案件、Windows7のサポート終了(2020年1月予定)によるパソコンのリプレイスなども市場の成長を後押しすると考える。一方で、2019年10月に予定されている8%から10%への消費増税による投資計画の前倒しや、投資金額縮小の可能性には留意が必要である。
2. 注目すべき動向:法人アンケート調査結果では4割超の企業でIT関与の割合が増加
本調査において実施した法人アンケート調査では、以下の通り、新商品/サービスの企画・開発・製造などにデジタル(IT)を適用するデジタライゼーションが活発化している結果となった。
まず、新商品/サービスの開発などにITが関与する割合の変化を、4~5年程度前と比較して尋ねたところ、「大きく増えた」と「少し増えた」との回答の合計が40.6%となり、実に4割を超える企業が新商品/サービスなどの開発などでこれまで以上にITを活用していることがわかった。回答企業の業種別にみると、特に「加工組立製造業」や「金融業」でこの傾向が顕著になっており、インダストリー4.0やフィンテック(FinTech)の影響であると考える。
また、近年、新商品/サービスの開発に際し、自社単独で行うのではなく、例えば自社にはない技術を持つ企業を買収する、専門知識を持つ企業(例えばコンサルティング会社など)の力を得る、オープンイノベーションなどの形で、自社単独ではなく、社外の力を積極的に取りいれようとする動きが見受けられる。
各企業に、新商品/サービスの開発などに外部リソースを活用する割合の変化を、4~5年程度前と比較して尋ねたところ、こうした機会が「大きく増えた」「少し増えた」と回答した企業は合わせて25.0%となった。
最後に、外部リソース活用の狙いについて、以下の選択肢から回答したもらったところ、「自社だけでは思いつかないアイデアを発見したい」が36.7%と最も大きな割合になっており、「他企業の事例が知りたい」は25.1%、「先端ITテクノロジーを活用したい」が18.5%と続いた。
従業員数規模別にみると、従業員数1,000人以上の大手企業では「他企業の事例が知りたい」よりも「先端ITテクノロジーを活用したい」の割合の方が大きくなっており、新しいことに挑戦する意欲をうかがうことができる。デジタル(IT)を適用することで、イノベーションを起こす取り組みは一朝一夕にいかないことが多い。そのため、中堅以下の規模の企業では体力的な問題から、他企業の事例を参考にせざるを得ないところもあると考える。
なお、今回の発表について詳しくは、矢野経済研究所が発行した「国内企業のIT投資実態と予測2017」に掲載されている。