2017年第3四半期の高速インクジェットプリンターは前年同期比67.7%増
プロダクションプリンター市場は縮小しているにも関わらず、高速インクジェットプリンター出荷金額は前年同期比67.7%増の20億6,000万円となり、プロダクションプリンター市場の3分の1を占めるまでに成長した。プリンターベンダーはオフィス市場の成熟化により成長が鈍化しているため、プロダクションプリンター市場にフォーカスしているが、中でも高速インクジェットプリンター市場は、技術やインクの開発が継続して行われているため、今後の成長が期待されている。
産業用高速インクジェットプリンターは、10年ほど前から継続的に製品が市場投入されてきた。印刷速度や印刷コストがレーザープリンターに比べて優位であること、さらにB2サイズのカット紙(枚葉紙)に印刷できる大型の製品が発表されたことなどから、最近注目度が上がっている。
高速インクジェットプリンターでは、印刷技術革新とインク品質向上によって、印刷品質が急速に向上している。また、B2サイズの枚葉紙への印刷が可能なプリンターは、オフセット枚葉機と同等の印刷速度を実現している。こうした印刷品質と速度の向上が、高速インクジェットプリンターの急速な拡大の理由であるとIDCではみている。
産業用インクジェットプリンターはあらゆるものへの印刷の可能性をもつ
産業用高速インクジェットプリンターは、すでにダイレクトメール、書籍、新聞などの印刷に使用されている。ダイレクトメール印刷では、顧客のデータから顧客の嗜好や購買行動を分析、顧客1人1人に合わせた内容のダイレクトメールを、最適なタイミングで送付することによって、収益が増加した例が報告されており、マーケティングツールの一部として機能し始めている。書籍や新聞印刷では、必要な部数のみを印刷することができるため、不要な在庫の削減と不要な印刷物廃棄の削減に貢献している。
さらに、インクジェット技術は非接触でインクの定着温度が低い印刷技術であることも注目に値する。そのため、紙だけでなく布や木材、プラスチックなどへの印刷が可能で、一部のインクジェットベンダーはすでに捺染(繊維製品の染色)、段ボール、軟包装材への印刷システムを提供している。このように、あらゆるものへの印刷の可能性をもつ産業用途のインクジェットプリンターは今後も開発が進んでいくと考えられる。IDCでは印刷品質や速度が向上し、応用範囲や印刷できる素材が増加することにより、市場がさらに拡大するとみている。
IDC Japan イメージング,プリンティング&ドキュメントソリューションのシニアマーケットアナリストである三谷智子氏は「産業用高速インクジェットプリンター市場では、高速インクジェットプリンターを使った印刷で顧客のビジネスをどのように変革し、売上増加に貢献できるのかが重要である。ベンダーは、ビジネスの変革の視点でソリューション提案を行うべきである」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「国内プリンター市場 2017年第3四半期の分析と2017年~2021年の予測」「国内MFP市場 2017年第3四半期の分析と2017年~2021年の予測」にその詳細が報告されている。