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IBM、コンテナによるクラウド移行強化と「Watson Studio」などAI新機能を発表

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長 三澤智光氏、
日本IBM 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部 吉崎敏文氏

 日本IBMは5月14日に記者発表会をおこない、取締役専務執行役員 三澤敏光氏と執行役員の吉崎敏文氏が、今年の3月に米国ラスベガスで開催された「THINK 2018」で発表された新ソリューションを日本に本格導入することをはじめ、クラウドとAI事業の最新アップデートについて紹介した。

コンテナによるクラウド移行が活況

 三澤氏はまず、最近のIBM Cloudの状況を以下のように語った。

 既存ITが生産管理や財務といった業務を支えるものであることに対し、デジタルのアプリの特長はテクノロジーによって生み出され、新しい顧客体験を生み出すものであること。成功のためには、開発と提供のスピードとアプリから得られるデータを分析・学習するサイクルを早めることが必要となる。

 そのために重要なテクノロジーは、疎結合サービスを組み合わせる「マイクロサービス」とクラウドアプリのポータビリティを高める「コンテナ」だ。

 特に、クラウド・ネイティブアプリ標準化や複数のコンテナをマネージする「Kubernetes」に対しては、IBMはこれまで積極的にコミットしてきた。また、IBMも自社としてのミドルウェア、サービスのコンテナ化を推進してきている。

 この間、IBMが注力してきたのは「IBM Cloud」の機能を「ファイアウォールの中のオンプレミス環境」に提供することによって実現することや、オンプレミスのシステムを非機能要件を毀損せずにクラウドに移行させる「IBM Cloud Platform」(ICP)だ。

 顧客のIT基盤の上にコンテナ/Kubernetesを置き、IBMのミドルウェアによるクラウド移行の自動化をおこなう、コンテナサービスなどは評価も高く実績をあげている。

 

 今回、THINK 2018で発表されたものでは、レンタカーのHertzの事例がある。DevOpsとマルチクラウドを提供することで、オンプレミス、IBM Cloud、AWSの3つのシステムを組み合わせた構成で実現したものだ。

 

 ICPによって顧客のデータとアプリケーションはオンプレミス、クラウド(IBMや他社のパブリッククラウド)を問わず最適な場所に置き移動ができる。この流れで今回、発表されたのが、レッドハットとの提携だ。「ICP on Red Hat OpenShift」によって、OpenShift上でサービスを展開できることになる。

 「コンテナとしてOpenShiftを使用していて、マルチクラウドマネジメントや統合されたモニタリング、ロギングの仕組みをICPによっておこないたいというお客様に応えるもの。KubernetesかOpenShiftのどちらを選ぶかはお客様次第」(三澤氏)

IBM Cloud Platform (ICP) for Data

 今回、THINK2018で発表された事例企業に軍産業向け金融機関のUSAAがある。USAAでは、平均よりも8倍のデータ、10倍のデータ収集・準備時間をかけている。優れたAIアプリケーションを育てるためには「きれいなデータ」が重要だからだ。

 過去のデータ蓄積・分析の歴史を振り返ると、90年代に構造化データの「DWHの時代」があり、2010年に構造化/非構造化データの「データレイクの時代」があった。この時代に「構造化/非構造化」の蓄積の効果を信じた企業こそが今の勝者といえる。IBMは「データレイク」の時代には、データを整理する「データ・カタログ」に力を入れた。このことが現在のAI・機械学習の時代に功を奏している。

 「きれいなデータ」によるAIを育てるためにはデータの準備工程に膨大な時間・工数がかかる。読み込ませから抽出した最適モデルを、ビジネスプロセスにつながるために効率的なサイクルを回すことが必要になる。

 この1)蓄積、2)探索・加工、3)分析、4)活用のプロセスにはそれぞれ下記の製品群が対応することになる。

 

 この一連の流れをクラウド/オンプレミスの両面でサポートするものとして、THINK 2018で発表されたものが「ICP for data」だ。ICPのコンテナサービスとそれを管理するファイルシステム、データカタログ・分析システムを一体化したもの。上記の1)〜3)をファイヤウォール内で活用できるようにしたものだ。

 Watsonの3つの新サービスを日本でも提供

 THINK 2018で発表され、今後日本でも提供されうるIBM Watson関連の新サービスについて、執行役員の吉崎敏文氏が、以下のように紹介した。

IBM Watson Studio
AI活用のための統合開発・分析環境。これまでのデータ分析基盤にWatsonサービスとの連携をさらに強化し、チームの協業を促進するとともに、Watson Machine Learning, Deep LearningなどのAI機能とシームレスに連携する。

 事例としては本田技術研究所の「デジタル・サンドボックス」がある。複数部門のデータ利用者が全社のデータを自由に分析し、その結果を共有して互いに教え合える環境をWatson Studioで構築した。

 

 またWatson StudioとICP for Dataは相互に連携する。「ICP for DataとWatson Studioの2つは学習データは同じで、オンプレミスに置くデータカタログがICP、クラウド側のナレッジガタログがWatson Studioとなる」(三澤氏)

IBM Watson Assistant
 チャットボットに代表されるユーザーとコンピュータが対話するアプリケーションを簡単に開発するためのサービス。これまでのConversation APIが強化されたもの。

 たとえば発注や支払いなどのユースケースに特化した対話の例の「インテント」が最初から実装され状況に即した効果的なチャットボットの開発が容易になる。

IBM Watson Services for Core ML:
 今回のTHINK 2018で発表されたAppleとの提携によるAIアプリのためのサービスセット。モバイルデバイス用の機械学習フレームワークであるCore MLに対して、Watsonサービスを活用して作成したモデルをエクスポートし、モバイルアプリを開発できる。現時点では、画像認識APIが対応済み。

 

Core MLによるiOSアプリのデモ、ARによる訪問先情報、故障診断、修理状況確認など修理作業者の支援をおこなう様子

 こうしたWatsonの3つの新機能は、AIをビジネスのプロセスに組み込むためのもの。

 「人間の持っている知見とトランザクションデータの双方をWatsonで整備し、カタログ化しAIエンジンで繰り返し学習させる。そうすることで、業務に関する“ナレッジ・アプリ”とも呼ぶべきものが生まれ、AIをビジネスプロセスに組み込むことができる」(吉崎氏)

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、EnterpriseZineをメインにした取材編集活動、フリーランスとして企業のWeb記事作成、企業出版の支援などもおこなっている。 ...

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