ビジネス向けブロックチェーンを取り巻く現在の環境は混沌としており、当初の期待ほどには取り組みが進んでいない。ガートナーが2018年に10月に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」において、ブロックチェーンは「過度な期待」のピーク期を越え、幻滅期へと坂を下りつつある(図1参照)。
ガートナーのアナリストでバイス プレジデントの鈴木雅喜氏は次のように述べている。
「ビジネス向けブロックチェーンの活用に際し、企業の目の前には技術的な課題とビジネスへの応用に伴う課題の両方が残っています。一方で、ブロックチェーンに関する大きな成功事例や、ブロックチェーンの特性をビジネスに生かす成功の方程式はいまだ明らかになっていません。ブロックチェーンの普及には今しばらく時間がかかる見込みです。ブロックチェーンを担当するリーダーとチームは、技術の正確な理解に努めながらも、経営層に対しては、ビジネス上のインパクトとリスク、将来への期待などに焦点を当てた分かりやすい説明をすべきです」。
ガートナーが2019年2月に日本で実施した最新のユーザー調査の結果、「ブロックチェーンを理解している」経営層の割合はわずか16.7%であり、2018年2月の27.8%から大きく減少したことが分かった。これは、変化し続けるブロックチェーン技術の動きに経営層が追い付けずにいることを意味している。
一方、同じ調査において、企業の65%がブロックチェーンの将来に大きな期待を寄せている現状が明らかになった。回答者の多くが、ブロックチェーンはいずれインターネットの出現に匹敵するインパクトをもたらす、あるいは、UberやAirbnbが市場を席巻したようにビジネスを変革するとみている(図2参照)。
この結果は、インターネットが情報の流通を押し広げたのと同じく、ブロックチェーンが信頼性のある取引を可能とするネットワークをインターネット上で形成し、自律的に動作するサービスが世界中に拡大していく可能性を示唆している。
前出の鈴木氏は下記のように述べている。
「ビジネス向けブロックチェーンの活用がなかなか進まない中でも、本テクノロジへの積極的な取り組みを続けている企業は存在します。彼らがそうした活動を継続しているのは、ブロックチェーンは将来の世界を変え得るインパクトを持ち、新たな市場で主導権を握る滅多にない機会をもたらす可能性を理解しているためです」。
ガートナーは4月23~25日、八芳園本館(東京都港区)において「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」を開催する。コンファレンスでは、「未来志向2030:新たな時代へ」をテーマに、昨今の状況と将来の方向を踏まえ、採るべき戦略、アクションとアドバイスが提示される。
今回の発表に関連した内容は、鈴木氏が「ブロックチェーンの真実:その現実と未来」(25日 9:00~9:45)で解説する。