「社内で広くPOC(Proof Of Concept)を実施している」の回答者は12.9%
IDCではAIシステムを「学習と推論を通じて自己修正するシステム」、およびRPAは「ソフトウェアによって情報の取得、プロセスの自動化、情報とワークフローの管理を行うもの」と定義している。
この定義に基づいて、IDCでは、2019年2月に企業の情報システムに対する知識を有している方を対象とした「企業のAIシステム/RPAの利用状況」に関するアンケート調査を行い、1,250社(うちAI/RPAに関する回答者は従業員規模100人以上の883社)の有効回答を得た。
この調査において、企業のAIシステムの利用状況について調査した結果では、「全社的に利用している」と回答した企業は12.3%、「事業部門で利用している」と回答した企業は25.6%となり、2018年調査(2018年4月実施)からそれぞれ0.4ポイント、3.2ポイント利用状況が上昇していることが判明した。
さらに「社内で広くPOC(Proof Of Concept)を実施している」の回答者は12.9%、「限定された部門でPOCを実施している」は11.3%となった。上記を合計した企業のAIシステム利用率は62.1%となり、2018年調査の同様の合計値である58.5%から3.6ポイント上昇していることがわかった。
本調査結果では、「社内で広くPOCを実施している」とした回答者が2018年調査と比較して増加しており、IDCでは2019年以降はさらに全社的な利用率が上昇すると予測している。
AIシステムの利用目的は「働き方改革」「経営状況の把握」「経営の改善」が多い
AIシステムの利用目的では、「働き方改革」「経営状況の把握」「経営の改善」の回答が多く、企業におけるAIシステムの活用が、自社の内部改革目的を優先していると考えられる。
AIシステム導入時の主要課題では、リーダーシップや組織が多く挙げられており、また継続/拡張時の課題としては「AIシステム導入を進める戦略がない」の回答が多く挙げられた。しかし、AIシステムに対するセキュリティやデータに関しては、課題として挙げるユーザー企業が比較的少なく、課題としての注目度が低い結果となった。
RPAの利用状況については、「全社的に利用している」と回答した企業は9.0%となり、2018年調査から2.4ポイント上昇した。一方「限定された部門でPOCを実施」「導入に向けた調査」「利用しない」とした割合も同時に増加していることから、導入サイクルが一巡し、効果などの面から利用継続の判断がなされ、新たな検討/導入フェーズにシフトしていると考えられる。
また、RPAを利用している企業にAI/機械学習の組み込みについて尋ねたところ、「対話型教育」や「対話型申請プロセス」の利用目的での回答者が多く、OCR(Optical Character Reader)による手書き文字や帳票の自動認識などで利用が進んでいると考えられる。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーである飯坂暢子氏は、「AIシステムやRPAの利用による企業の業務の自動化は着実に広がっている。しかし利用目的は企業の内部改革を優先し、顧客を指向した外部改革では適用が低い状況にある。デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業や組織は、顧客価値の向上を考慮したAIシステム/RPAの活用戦略を明確にし、人材や組織を最適化しながら活用を進めていく必要がある」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「2019年 国内AIシステム/RPAソフトウェア市場 企業ユーザー調査」にその詳細が報告されている。レポートでは、アンケート調査結果をもとに、国内企業におけるAIシステム、およびRPAの利用状況について集計/分析している。また、利用上における課題や導入元企業の傾向に関する調査結果も掲載されている。