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ブロックチェーン・プロジェクトには回避すべき7つの落とし穴がある――ガートナー発表

 ガートナーのアナリストでシニア ディレクターのエイドリアン・リオ氏 は、次のように述べている。

 「ガートナーの最新の『先進テクノロジのハイプ・サイクル』によると、ブロックチェーンは幻滅期の谷底へと坂を下っています。一方で、ブロックチェーンのプラットフォームやテクノロジの市場はいまだ初期段階にあり、製品のコンセプト、機能セット、コア・アプリケーションの要件といった主要コンポーネントについて、業界の合意が形成されていません。ガートナーは、今後5年以内に特定のプラットフォームが市場を独占する優位性を獲得することはないと見込んでいます」。

 ガートナーは、ブロックチェーン・プロジェクトを成功させるには、失敗の根本原因を理解する必要があるとし、ブロックチェーン・プロジェクトでよくある7つの落とし穴と、その回避策を発表した。

落とし穴その1:ブロックチェーン・テクノロジを誤解または誤用する

 ガートナーは、ブロックチェーン・プロジェクトの大半が、「分散型台帳(DLT)」を介してブロックチェーン・プラットフォームにデータを記録するためだけに使用され、非中央集権型の合意形成、トークン化、スマート・コントラクトといった本テクノロジの主要機能が見過ごされているとみている。

 「DLTはブロックチェーン機能の一部にすぎません。ブロックチェーンの機能セット全体を使用している組織がほとんど存在しないことから、そもそもブロックチェーンは必要なのかという疑問が生じています。手始めにDLTを使用することに異論はありませんが、CIOが優先すべき課題は、ブロックチェーンの特性を活用したユースケースを明確にし、まだ使用していないブロックチェーンの特徴も生かせるプロジェクトに移行することです」(リオ氏)

落とし穴その2:ブロックチェーン・テクノロジを本番環境向けに準備が整っているものと見なす

 巨大なブロックチェーン・プラットフォーム市場の大部分は、さまざまな方法で差別化を図る多様な製品/サービスで占められており、各プラットフォームの焦点は、機密保持、トークン化、ユニバーサル・コンピューティングなど多岐にわたっている。

 プラットフォームに必要なシステムやセキュリティ/ネットワーク管理サービスは、大規模な本番環境に適用するには未成熟なものがほとんどだ。

 しかし、この状況は今後数年以内に変化するでしょう。CIOは、ブロックチェーン・プラットフォームのケイパビリティがどのように進化していくか注視し、そうした進化に応じてブロックチェーン・プロジェクトのスケジュールを調整する必要がある。

落とし穴その3:プロトコルとビジネス・ソリューションを混同する

 ブロックチェーンは、サプライチェーン管理や医療情報システムなど、さまざまな業界/用途に使用可能なテクノロジ基盤になる。ただし、ユーザーが使用する場合、ブロックチェーン単体では機能しないため、ユーザー・インタフェース、ビジネス・ロジック、データの保持、相互運用性のメカニズムといった機能を用意しなければならない。

 「ブロックチェーン基盤は単体で完全なアプリケーションのように使えるという誤解が見られます。ブロックチェーンは、アプリケーション全体の中で特定のタスクを実行する一種のプロトコルである、と考えれば分かりやすいでしょう。E-Commerceシステム全体やソーシャル・ネットワークをアプリケーション抜きにプロトコルだけで使うことはできないのと同じです」(リオ氏)。

落とし穴その4:ブロックチェーンをデータベースやストレージのメカニズムとして単純に捉える

 ブロックチェーン・テクノロジは、信頼性の不確かな参加者による自由なやりとりを可能にすべく、変更不可能で信頼できる確かな記録が保持されるように設計されている。この点は従来のデータベースに対する優位性となるが、逆にブロックチェーンは、従来のデータベースには備わっている複数の機能を持っていない。

 現在のブロックチェーン・テクノロジは、従来のデータベースが有する「作成」「読み取り」「更新」「削除」機能のすべてを網羅しているわけではない。ブロックチェーン・テクノロジで提供されているのは「作成」と「読み取り」のみだ。

 「CIOは、ブロックチェーン・プロジェクトのデータ管理に関する要件を、ブロックチェーンの機能や特性と照らし合わせる必要があります。場合によっては、従来のデータベースを選択する方が適しています」(リオ氏)。

落とし穴その5:相互運用性の標準が存在していると考える

 ブロックチェーン・プラットフォームのベンダーによっては、ほかのベンダーのブロックチェーンとの相互運用性について言及している。しかし、大部分のブロックチェーンとそのプロトコルが現在も開発段階にある中で、将来の相互運用性を構想するのは困難だ。

 相互運用性に関するベンダーの説明は、マーケティング戦略の一種であると仮定して向き合うべきである。相互運用性は、ベンダー間の競争には重要なポイントだが、エンドユーザー組織に必ずしもメリットをもたらすものではない。

 「ほかのベンダーがまだ提供していないテクノロジとの相互運用性を期待して、ブロックチェーン・プラットフォームを選択すべきではありません」(リオ氏)。

落とし穴その6:スマート・コントラクトの課題は解決済みであると見なす

 ブロックチェーンを実現するテクノロジの中で最も強力であると目されるスマート・コントラクトは、トランザクションに自動化の要素を加えるもの。スマート・コントラクトとは、概念的には、特定のトランザクションに関連付けられたルール・ベースのワークフローであると理解できる。

 しかし、従来の中央集権型システムとは異なり、スマート・コントラクトはピア・ツー・ピア・ネットワーク内のすべてのノードによって実行される。そのため、拡張性と管理性に関する課題が生じており、これらはまだ完全には解決されていない。

 スマート・コントラクトは、今後も大きく変化していくと予想される。CIOは、現時点で全面的な採用を計画するのではなく、まずは小規模な実証実験を進めるべき。今後2~3年間にわたり、ブロックチェーンのスマート・コントラクト・テクノロジは成熟していくと思われる。

落とし穴その7:ガバナンスの問題を見過ごす

 プライベート・ブロックチェーンやパーミッション型ブロックチェーンの場合は、通常、ブロックチェーンのオーナーがガバナンス問題に対処する。ここが自律的に動作するパブリック・ブロックチェーンとは異なっていることを理解しておく必要がある。

 回避すべき落とし穴の7つ目について、リオ氏は次のように述べている。

 「EthereumやBitcoinといったパブリック・ブロックチェーンのガバナンスでは、主に技術的な問題に焦点が当てられています。人間の行動や動機はほとんど対処されません。CIOは、ブロックチェーンのガバナンス問題がプロジェクトの成功に及ぼすリスクについて、認識する必要があります。特に大手企業は、パブリック・ブロックチェーンのガバナンス・モデルの特徴を生かすため、コンソーシアムへの参加、またはコンソーシアムの立ち上げを検討すべきです」。

 日本でブロックチェーン領域を担当しているアナリストでバイスプレジデントの鈴木雅喜氏は、次のように述べている。

 「ブロックチェーンが将来のインターネットの姿を変え、社会が変貌し、その結果、新たなビジネスが増殖するというシナリオが、ブロックチェーン業界の関係者やブロックチェーンに真剣に取り組む企業から広く語られるようになりました。極めて高い期待値と目の前に山積する課題を正しく理解し、戦略的な取り組みを続けるべきです。大きな機会が、私たちの未来に横たわっているのです」。

 ガートナーは、11月12~14日に「Gartner IT Symposium/Xpo」をグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール(東京都港区)で開催する。ブロックチェーンの最新動向や関連する内容については、鈴木雅喜氏が講演する予定だという。

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